地質フィールドノートのヒント
- 野外で書いたメモを,その日の夜に別のノートに清書するのは好ましくない.野外で見たこと考えたことすべてを一冊のフィールドノートに書くようにするとよい.そのためには大判のノートを使うとよい.ふつうのB5ノートが一番手頃だ.A5でもいいが手に入りにくい.薄いほうが使いやすい.
- 初心者はフィールドノートを一冊だけ持つのでよいだろう.卒業論文研究などで自分にとって特別のフィールドができたら,それだけを別のノートにする.将来は地域別のノートを複数もつことになろう.
- 日付・地名・番号をまず記述する.その地点の特徴(犬に吠えられた,弁当を食べた,誰かがすべってころんだなど)を書いておくと,あとで思い出すときの助けになる.
- 地形図に地点番号を書き込む.このとき,その地点が全体の中で占める位置をよく理解しよう.(火口までの距離と方向・地形面の高さなど)
- 観察地点の番号は,ノート別に通し番号(1,2,3,...)をつけると整理しやすい.同じ番号を別のノートで使っても,地域が違えば(地形図が違えば)混乱することはほとんどない.
- まずスケッチをしよう.
- 地層が累重している場合は柱状図をかく.
- 色鉛筆で着色する.
- 事実の記載と,解釈やアイデアのメモ書きを明確に区別する.ボールペンの色を違えるのはいい考えだ.
- 以上のようなスケッチ主体のフィールドノートを書くと,現地で露頭を観察しているときと同じ気分で論文が執筆できる.机の上でいろいろと考察をめぐらして新しい疑問に突き当たってもスケッチと地形図と写真をみれば,(限界はあるが)まるで現地にいるかのように露頭と対話して考えを深めることができる.もしスケッチ主体でなく文字主体のフィールドノートを書くと,現地で書いた文字以上の考察へ執筆段階で進むことはむずかしい.また,机上で露頭間の関係を比較考察するときも,はなはだやりにくい.
フィールドノートの例1 フィールドノートの例2
- 試料を採取したら,地点番号に枝番号をつけて試料袋に記入する(たとえば51-1).そして,フィールドノートのスケッチあるいは柱状図に枝番号を記入する.
- 地形図にもいろんな情報をどんどん書き込む.色鉛筆で大胆に着色する.
- 登山による調査のときは,地形図の余白と裏をフィールドノートにするのもいい.
- 写真はプリントの方が整理検討するときに便利である.
- 数日以上の旅行の場合は,同行者名・毎日のコース概略・宿泊地などの表をつくる.
- ときどきノートを整理して,中間まとめのページをつくる.
- 長い調査旅行の場合は,論文や報告書の章立てを旅行の後半で考えてノートに書き込む.
- 野外で役立つ筆記道具
- 一本で黒赤2色のボールペン(三菱のGET2,100円)
- 一本で8色の色鉛筆(ぺんてる,2500円くらい)
- 0.7mmのシャープペンシル(ぺんてるのGIZMO A37は全体がプラスチックでできていて,金属の先端が引っ込むので危なくない.日本円不明)
- 野外観察に役立つ道具
- なにはなくとも双眼鏡
- サングラス(まぶしいとよく見えない)
- スパッツ(靴の中にどろがはいらないので気持ちよく観察できる)
- ねじり鎌(露頭はいじってみるとたくさん語ってくれる)
- つるはし(露頭はつくるものだ)
- 底が堅い頑丈な靴
- カメラ
- タオル(もちろん温泉用)