火山観測情報第2号 平成10年10月29日16時50分 旭川地方気象台発表 火山名 十勝岳 十勝岳火山観測所に設置している遠望観測装置で収録した10月12日の 映像に,62−2火口から黒灰色の噴煙を2回にわたって噴出していたこと を確認しました。1回目は16時51分頃から約2分間,噴煙高度約600 メートル,2回目は17時12分頃から約1分間,高度約300メートルで した。 9月28日から29日に実施した定期現地観測で確認された62−2火口 底の熱泥水の噴出は,10月13日に行った臨時現地観測では停止していま す。10月9日夜には,高感度カメラによる観測で,62−2火口付近が明 るくなる現象を確認し,現在も引き続いて観測しています。 本日午後4時現在,噴煙は雲のため不明となっています。 火山性地震回数は,10月1日から28日まで39回で6月から8月に比 べるとやや少ない状態が続いています。 今後,火山活動に変化があれば,火山情報でお知らせします。
火山観測情報第1号 平成10年10月14日14時30分 旭川地方気象台発表 火山名 十勝岳 9月28日〜29日に実施した定期現地観測で,62−2火口底に熱泥水噴出を 確認しました.この現象は,1985年に62−1火口で観測されて以来のことです. このため,10月13日に臨時現地観測を実施しましたので,その結果をお知らせ します. 62−2火口は,活発な噴煙活動が続いています. 熱泥水の噴出は10月5日にも確認していますが,今回の観測では停止してお り,直径約5メートルの窪みとなって,その中心から白色の噴煙を勢いよく噴出し ていました. 火口北西側内壁の噴気孔は,赤外放射温度計による噴気温度460℃(前回 456℃)と高温の状態が続いており,青みを帯びた噴気を勢いよく噴出していま した. 10月9日夜に,超高感度カメラによる観測で,62−2火口付近が明るくなる現 象が観測されました.この現象は現在も続いていますが,肉眼では確認できませ ん.これは,火口内の硫黄や火山ガスの燃焼によるものと考えられます. 本日午後1時現在,噴煙は白色で高さは200mとなっています. 火山性地震回数は,10月1日から13日まで18回で6月から8月に比べるとや や少ない状態が続いています. 今後,火山活動に変化があれば,火山情報でお知らせします.
定期火山情報第3号 平成10年10月5日14時00分旭川地方気象台発表 火山名 十勝岳 本年第3回目の定期火山現地観測を,9月28日から29日にかけて実施しました.その結果 と最近の活動状況についてお知らせします. 1.概況 62−2火口は,北西側内壁噴気孔で456℃を観測し,火口底には熱泥水を噴出している 箇所が認められたほか,西側内壁には噴気の強い新たな噴気孔が形成されていました.ま た,62−0火口も変色域の拡大が認められました.このように,62火口群の熱的活動は活 発化の傾向が見られます. なお,火山性地震は6月から7月に一時的に増加したものの最近は減少しています. 62−2火口の状況については,臨時現地観測を予定していますので,その結果について は火山情報でお知らせします. 2.震動観測 昨年9月からのH点における月別の火山性地震回数および火山性微動回数は表1のとお りです.図1は山麓のA点と,火口に近いH点で観測された地震回数の推移を示しています (図2に震動観測点の位置を示しています).昨年1月から観測を開始したH点では,1997 年5月と1998年6月から7月にかけてやや多くなっていますが,A点では1995年から19 96年にかけての活動に比べると少なく,最近の地震の増加はいずれも小規模な活動と考 えられます. 表1 H点の月別火山性地震および火山性微動回数(1997年9月〜1998年9月) 回数基準:火山性地震 最大振幅0.10μm以上の回数 火山性微動 最大振幅0.08μm以上の回数 ----------------------------------------------------------------------- 月 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ----------------------------------------------------------------------- 火山性地震 29 60 65 44 102 81 77 37 35 331 317 117 64 火山性微動 1 1 0 0 1 2 0 0 1 0 1 0 1 ----------------------------------------------------------------------- 3.遠望観測 旭川地方気象台の観測では,62−2火口および62−0火口は,噴煙量の増加傾向が 見られます.その他の火口では特に変化はありません.本年8月からの噴煙の高さの最 高は62−2火口で500m,62−0火口は50mで,色は白色でした.図3・図4は,それぞ れ62−2火口,62−0火口の1986年以降の月別の噴煙の高さの最大と平均を示して います.62−2火口では,1988〜1989年の噴火後,噴煙の高さは徐々に低くなりまし たが,1995年頃からやや高くなり一旦減少したものの再び増加傾向を示しています.62 −0火口では,1995年の噴気再開後,1996年6月まで100mを観測し,その後一旦減 少しましたが,今年に入って80mを観測するなど,増加傾向が見られます. 4.現地観測 1)62−2火口 62−2火口では,活発な噴煙活動が続いています.「シューゴー」という噴気音が前回よ りも大きく,約1キロメートル離れた避難小屋からも確認されました.火口内には多数の噴 気孔があり,一部からは青みまたは黄色みを帯びた高温の噴気を勢いよく噴出していま す.北西内壁にある噴気孔(直径約3メートル)を約40メートル離れた火口縁から赤外放 射温度計で測定した噴気温度は456℃(前回423℃)でした.火口底は広く硫黄が付着 しており,高さ約2メートルの熱泥水を噴出している箇所を確認しました.熱泥水噴出は, 1985年5月に62−1火口で確認して以来のことです.また,西側内壁には北西内壁の 噴気孔と同じ形の新たな噴気孔が形成されているのを確認しました.火口全体から有毒 な火山ガスを含む噴煙が多量に噴出しており,強い刺激臭が認められます.新たな噴気 孔および熱泥水の箇所は図5に示しています. 2)62−0火口,62−1火口 62−0火口,62−1火口とも,依然90℃以上を示す観測点が多く認められます.地中 温度の最高値は94℃でした.また,62−0火口では変色域の拡大が認められました.噴 煙には有毒な火山ガスが含まれており,強い刺激臭が認められます. 3)62−3火口 62−3火口では,6月および8月の現地観測で再開が確認された噴気活動は,今回の 観測でも認められました.地中温度の最高値は前回とほぼ同じ86℃でした. 4)振子沢噴気孔群 振子沢噴気孔群では,前回の観測で変色域や地熱地帯の拡大が見られましたが,それ 以上の拡大は認められませんでした.地中温度の最高値は94℃でした.図6は1984年 以降の地中温度の変化を示しています.地中温度は昨年から上昇し,現在は噴火前のレ ベルに戻っています. 5)大正火口 大正火口は,やや活発な噴気活動が続いており東壁全体から噴気しています.噴気孔 付近は硫黄のため黄色くなっています. 6)その他 吹上温泉では,8月に一時湯量が少なくなりましたが,今回の観測では普段の湯量に戻 っていました.また,8月下旬に旭川開発建設部および上富良野町役場より十勝岳山麓で 樹木が枯れているとの情報があり,現地調査の結果,富良野川上流の沢沿い約4kmの 区間でダケカンバなど広葉樹の葉が枯れているのが確認されました.原因は特定できま せんが,富良野川上流の沢沿いに流下した火山ガスの影響と考えられます.図7に葉枯 れ樹木のおおよその範囲を示します. 5.注意事項 登山者は以下のことを十分注意して下さい. ○62−2火口や旧噴火口などの噴煙には,有毒な火山ガスが含まれています.噴煙は 風向きによっては登山道や沢沿いに山麓まで流れることがあります.また,火山ガスは 風が弱いなどの気象条件によっては窪地や低地に滞留することがあります. ○丸山から大正火口上部,および62−0火口は,崩れやすくなっており,丸山直下の岩 塊は崩落の恐れがあります.また,旧噴火口では地面の軟弱な所があります.
定期火山情報2号(未入手)
1998年
定期火山情報 第1号 7月2日13時00分 旭川地方気象台発表