水鉛谷TE5(370.0ka)海洋同位体ステージ11

 町田ほか(1974)は,神奈川県中井町鴨沢に露出する黒雲母を含む厚さ25cmの火山シルトをTE5とよんで,多摩丘陵のHBPおよび房総半島の地蔵堂層中にあるHy3(J4とよばれることもある)と同一物であることを示した.その給源は飛騨山脈の水鉛谷火道にもとめられる(原山,1990).

 水鉛谷TE5火山灰の中下部に含まれるホルンブレンドの屈折率は高い(〜1.690)が,上部に含まれるホルンブレンドの屈折率は低い(〜1.670).この特徴によって,高屈折率ホルンブレンドばかりからなる他の水鉛谷テフラ群から区別できる.北関東で,NLu20(竹本ほか,1987b),尾田蒔(鈴木・早川,1990),クレンザー(矢口ほか,1993)とよばれたテフラも水鉛谷TE5火山灰と同一物である.

 町田ほか(1980)によると,地蔵堂層中のHy3は海洋同位体ステージ11にあるので,水鉛谷TE5火山灰の噴火年代を370.0kaとする.

 放射年代は,フィッショントラック法によって,390±80ka(鈴木・杉原,1983),510±90ka(徳橋ほか,1983),380±20ka(福岡ほか,1984),490±80ka(竹本ほか,1987b),430±40ka(矢口ほか,1993)と報告されている.

上部に含まれる屈折率の低いホルンブレンドは,直後に降下した(おそらく黒富士を給源とする)テフラからの混入物質らしい.TE5は大町テフラ群のうち最下位を占めるA1Pmそのものであると考えるのがいいようだ.したがって,その噴出年代は370.0kaとみたほうがいいだろう.これは海洋同位体ステージと矛盾しない(1997.4.7).

町田・新井(2003)は、350kaだと考えた。

早川(1995火山特別号)は,420.0kaとした.

引用文献


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