蘭からの手紙
拝啓 長井家のみな様
いつも、お世話になっております。わたくし、長井家の番犬、長井蘭（らん）です。
のっけから、こんな話題で申し訳ないのですが、お願いですから、私が下痢をしていたり、食欲がなかったりしていたら、心配してください。たとえ、あなたがた長井家の人々が全員O型で楽天家で、「ほっときゃあ、なおるだんべ。」という考え方の持ち主であってでもです。あとで痛い目に遭うことは知っているでしょう。隆行さん。あなたは、おやしらずを８ヶ月も放っておいたでしょう。私も、あなた方に、半年も下痢を放っておかれました。やっと医者にいって注射でそれは治ったけど、お医者さんに呆れられてましたねえ。まったくこっちが恥ずかしかったですよ。(にゃいまん談：あれは僕も恥ずかしかった。ごめんよ。）
思えば９年前、あなたが小学校６年の時です。私は「血統書付き柴犬」として長井家に迎えられました。それ以来、幾多の試練を乗り越え、私は長井家番犬として、決してペットではなく、精進してまいりました。私は任務をきっちりと遂行したつもりであります。ある時は、私の陣地に「カマキリ」という三角顔の怒ると怖い「昆虫」の侵入に対し、吠え続けることで、ご主人様の注意を喚起させました。また、わたしは、たとえ寝ていても番犬としての任務を忘れたときはありません。夢の中で、敵があらわれたときも、しっかり吠えたつもりです。（にゃいまん談：それは寝言だろ。こいつ犬のくせに寝言いうんですよ。）
でも失敗もしました。隣のうちのねこが、私が寝ているすきに皿に残っている餌を食べに来るのです。私は１回で食べきれないので、夜の分を残しておくのです。しかしそのねこに食べられてしまった日は、夜がとてもハラペコでした。吠えればいいのだけど、あまりにも堂々と食っていくので、小心者な私は怒れないんです。これは、私の番犬人生の最大にして唯一の汚点でした。（にゃいまん談：何回もねこに食べられてるだろうが。）
月日が経つのは速いものです。わたしも生まれてからそろそろ１０年が経とうとしています。そういえば、結婚の機を逃してしまいました。私はこれでも面食いで、かっこよい柴犬の雄でなければ駄目なんです。何回かお見合したけど、何かこうものたんないのよね。理想が高すぎたのかしら。まあ、わたしの人生オールドミスっていうのもよかったかもしれないわ。これも、長井家に迎えられたからあるわたしの人生だわね。あとは、長井家の人々が、私の体調を心配してくれればいいのですけどね。 かしこ （にゃいまん談：蘭は長井家で生活していて本当に幸せな人生を送っているでしょうか。心の中の気持ちはわからないけど、蘭はたまに幸せそうな顔をします。）
