チェイン・オブ・クレーターズ道路の終点から歩いて、約2時間、途中で、スコールにあって、全身びしょびしょになって、オ−シャン・エントリーに到着。駐車場からみた噴煙が、目の前に大きく広がる。その噴煙の出口に近づくと、すでに何人かの観光客が、来ていた。しばらくその噴煙を眺めていると、数分ごとに爆発が、起きて 2〜30mの範囲に渡ってスパターが飛散している。私たちが眺めていた場所にもそれほど古くないスパターが、点在するのを早川先生がめざとくみつけ、われわれに危険であることを促した。そんなことも知らずかフランスの観光客は爆発が起きている近くで、写真を撮っていた。この光景を観て、なんと無知な人々であろうとこのころは、思っていた。
だんだん、日が沈みはじめると、スパターが赤く輝いて見えるようになってきた。このような光景をみていた私はふと考えこんでしまった。今回の旅行の目的はなんであったであろうか、たしかドロドロの熔岩を手で触ってみることが目的のひとつではなかったのか。このまま目的を果たさずして日本に帰れるであろうか、いや帰れやしない、などと一人で爆発をみながら自問自答していた。
しばらくして、「よし、あの真っ赤なスパターを取ろう!」という結論に達した。しかし、スパターにぶつかったら、下手すると死んでしまうということを考えたが、長いこと爆発を眺めていた私は、爆発に周期があることをみつけていた。大きな爆発のあとには、連続して大きな爆発は起こらないことがわかっていた。
よし、次に大きな爆発が起きたら赤いスパターをとりにいくぞ,と決心した。ドカーンと大きな爆発が起きた。赤いスパターが、放物線を描いて飛散した。私は全力で暗闇を走った。足もとは暗く熔岩がゴツゴツしていて思ったように走れない。しかし、目の前に赤く輝いているものが見えてきた。高温スパターである。目の前にあの赤い熔岩があるのである。近づいてみるとまわりは、すでに少し黒く固結し始めているが、中は赤く輝いていた。
よしとるぞ、と思ったが、「何で取ろうか?」と考えてしまった。バカな私は、取る手段を考えていなかったのである。まわりを見まわすとパホイホイ熔岩の表面が割れて転がっていた。ちょうど大きさも手のひらサイズである。両手にこの礫を手にすると赤い熔岩を二つの礫ではさみこんだ。その時の感触は、つきたての餅に触れたような感じである。その柔らかった熔岩も、しばらくすると固くなってただの熱を持ったスパターになってしまっていた。しかし、このスパターは、私が高温の時、力を加えたために人為的作用の加わったスパターになったのである。まさしく人間と自然の共同作業によってできたスパターなのである。
今回の旅行の目的の一つであるドロドロの熔岩に触れることができた。このことは、一生忘れることのない楽しい思い出になりました。みなさんも、ハワイにいったらぜひともドロドロの熔岩を触ってみてください。一生の思い出になりますよ。しかしそれには、少しの危険と度胸が必要ですけど。