ヒロ空港までのみちのり
昨晩(26日)の話し合いのとおり,空からの火山見学をしたい東宮,中村(正)と,それに加えて,ザックや衣類を買い足したい小島,田村の4名は,東宮号のメタルブルーのMystiqueでナマカニキャンプ場をあとにした.
まずは,ヒロ飛行場まで,国道11号線を北東へ約30マイル,約30分くらいの行程.キラウエアからの道は,両側に20mくらいの樹高の森の中を,長くゆるい下り坂が続いています.北海道の生活が長かった東宮さんによる「木の種類さえ気にしなければ,北海道原野の雰囲気だ.キタキツネとエゾシカがでてきそう」という感想がぴったりの雰囲気です.
キャンプサイトを出発するときには,晴れ間も見えていましたが,山をくだるにしたがって見る見る悪くなり,ケアアウで国道130号線と分かれるあたりからは,全天の雲と強いスコールがふりはじめました.「ついてないなあ.みえなければしょうがないよね.」「ダメなら,ヒロの名所めぐりをしましょう.」などと言っているうちに,ヒロ空港に到着しました.
ヒロ空港で
自動車を空港有料駐車場に入れて,まずは,ターミナルビルへと向かいます.午前10時ころになっています.強い雨はやみましたが,まだほぼ全天くもり. 空港のターミナル内の左側には,遊覧飛行業者のカウンターが2つほどあります.小島さんが,(英語で)予約状況を聞いてまわりましたが,今日のフライトは,すべて満杯とのこと.
アレレ,天候を心配しているどころのさわぎではありません.と,あせっているときに,空港にあった無料ガイドブックで,サファリヘリコプターという業者があることがわかりました.先ほどのカウンターのおねえさんに場所を教えてもらいました.ターミナルビルから出て左へ200mくらい行ったところの,2階建てのたてものだ,ということです.
またまた,小島さんに折衝してもらいます.たばこをスパスパ吸いながらおねえさんが応対してくれています.ヤンキーですがニホンのヤンキーのようではありません.
やはり,「今日は満杯.明日午後ならOK」とのこと. アララ..と思っているときに,窓口の反対側のクローズしているカウンターに,飛行機の写真ののる真っ赤なパンフレット目に入りました.パンフレットの電話番号は,目の前のヘリコプター業者とおなじ.ということで,今度は,エアープレインの予約状況を聞きます.「1度に2人しかのれないけどいいか?」「午後4時からなら飛べる」というような内容を聞いて,「もう少し早い時間はダメなのか?」と小島さんが聞きましたが,「それはできない,」とのこと.みなで相談し,予約することにしました.
「ひとり68ドル+税.45分くらいの飛行時間.2時30分ころには,ここに来てください」と説明があり,体重を量り,名前を書いて,予約がすみました. 飛行コースは,海岸ぞいに Pu'O'o まで行って,内陸から戻るコース.キラウエアカルデラの上空をみたい,と言ったら,「飛行禁止になっている」とのことで,残念ながらそちらの希望はかないません.「空模様があやしいけれども..」との問いかけに,「問題ない.午後には晴れる」というような,たのもしいおことばが戻ってきました.
まあ,これでなんとか空をとべることが確実になってきました.「See You Later!!」と,小島さんが慣れた挨拶をして,自動車に戻り,とりあえず,お買いものへ出発しました.時間はまだ数時間あります.
ヒロ散策へ( Rainbow Falls と Boiling Pots と Kamehameha Avenu)
WAL MartやKTA ショッピングセンターへ行き,各自のおめあてのものを探し回りました.わたしは特に買い物もないかったので,ファストフードのところで,シャーベットを注文していました.注文を受けてくれたおねえさん(こんどは,ニホンのヤンキーとおんなじ感じのヤンキーのおねえさん)が,ほんとうに一生懸命,そしてゆっくりとした発音で,シャーベットに混ぜるものやら大きさを説明してくれているのですが,まったくわからず,最後に彼女は,ため息をついて,とてつもなく大きなカップにペンギンが水浴びできそうなくらいいっぱいシャーベットを入れて,不透明なくらい真っ赤な液体をかけて,わたしてくれました.私が指さしたものが,おそらく一人用ではなかったのでしょう.小銭の区別がつかないので,わたしが,テーブルの上にじゃらじゃらとコインをならべると,一度天をあおぎ,その後にこやかに,会計をしてくれました. そうこうしているうちに,昼食どきとなり,「豪華な食事でもしよう」,「トロピカル☆#ランチをぜひ食べよう」,などと話し合っていましたが,結局,ファストフードのテイクアウトでヒロのどこか観光スポットへ行って野外で食事しよう,という妥当な結論となりました.
(Rainboe Falls)
東宮さんの発案で,ヒロ市街地の西にあるRainbowFallへ行くことになりました.途中ハワイ大学ヒロ校やヒロ高校のある文教地区をとおりましたが,土曜日のためか,ほとんど人影をみませんでした. 国道200号(サドルロードです)へでてからヒロ州立病院へ向かう脇道に入ったところにRainbow Fallがあります.
Rainbow Fallには,芝生と駐車場,トイレがあり,食事する場所としての最低要件は満たされています.しかし,見学の対象としては,ガイドブックがなんとかこうと,ハズレです.水量が少なかったこともあるのでしょうが,滝のスケールが小さく,みとおしもよくない.
ここで,東宮と中村(正)は,ガスでお湯をわかしてラーメン+パン+コーヒー,小島と田村は,テイクアウトの食事をとりました.その間,いれかわり立ち代わり,数組の家族,グループの観光客がきましたが,滞在時間数分で,たちさっていきました.これは,わたしたちの食事風景にあきれたのではありません.RainbowFallsの魅力の程度によるものです.
(Boiling Pots)
食事の後,こんどはさらに上流の Boiling Pots を見学しました.熱源は何かな?などの想像をかきたたせる,なかなかmystiqueなネーミングですが,実態は,開析された,規模の小さい吾妻渓谷,といえるようなしろものです.早瀬と窪があるところ.残念ながら,沸き立つような水流の泡立ちは,見られませんでした.
(Kamehameha Avenuとヒロの津波被害の痕跡)
まだ,時間があるので,ヒロ湾の方向に戻り,田村さんのお目当ての衣類を探すことにしました.Bay Frontどおりに面している,ダウンタウンのカメハメハアベニューによりました.パーキングメーターにコインを入れて自動車をとめ,また各自のおめあてのものを探し回りました...
Kamehameha通りに面している商店街は,観光客や地元の人々も多くにぎやかです.ただ,街並からは,なんともギクシャクしているような印象を受けました.格式あるヨーロッパ調を模した新しい建物がある一方,屋根だけ上げた市場やテント村などが見られます.また,あたらしい建物のすぐ裏に入ると,更地のところ,放棄されたあばら屋風の家やあまり高級にみえない家々が雑然とならんでいます.地上げされかけた下町のような,なんとも,統一性のない雰囲気です.さきほどkamehameha通りにくるまでに自動車から見た,海岸から離れた山の手?の,まさにシックな町並みと,違いすぎます.
そのときは,誰に聴くすべもなかったのですが,このような街の光景は, 1946年4月1日のアリューシャン地震津波と1960年5月23日のチリ地震津波によって,海岸側が壊滅的な被害をうけたことの後遺症である,ということがあとでわかりました.内陸の建物は,助かった.. ゴーストタウンになってしまったのを,現在復興中にある,ということのようです.
ハワイと津波の影響については,後にサウスポイントの露頭で話題になりましたが,この時は,まったくアタマに浮かびませんでした. もうすこし真面目に,人文地理をあたまに入れておくべきでした.
田村さんは気に入った衣類を手に入れて,東宮さんや小島さんもおみやげやら食糧を手に入れ,ヒロ空港へと向かいます.
青ぞらの占める割合が増え,いい予感があります.
Take Off
ヒロ空港についたのが,午後2時30分くらい.最終的な支払をしました.
待合所のドア1枚向こうが,ヒロ空港のエプロンになっており,ヘリはすぐそばで離着陸します.ドアには,とりあえずの治安対策のためでしょう,簡単なボタンキーがついています.ヘリは,1時間に1回くらいの割合で飛んでいるようです.
3時過ぎにヘリが降りてきました.8人くらいの家族親類でしょうか,ドアから出てきた老若男女をとりまぜたヒトたちは,みな興奮状態で,身振り手振りで,お互いの空での様子を,からかいあっています.また,待合所にいる私たちにむかって,親指をたててウィンクしながら,感激を伝えてくれます.入れ替わりに,待っていた家族ずれが6人くらい乗り込んで,ヘリは,エンジンを止める間もなく,飛び立っていきます. 私たちの乗る軽飛行機は,パイロット+2名ということなので,田村と中村(正)が先,小島と東宮が後ときめました.これは,小島さんが,買い忘れたザックを手当てするため,田村 中村(正)を待っている間に,自動車で買いに行くことを,想定したものでした.
なかなか飛行機があらわれず,ぢりぢりして待っていました.天気は大きく回復し,充分に青空が広がっています.
待合所のガラス窓に,飛行機が見えたのは,4時近くでした.ヘリコプタの離着陸する場所よりもはるか向こうに,小さな飛行機が到着しました.やけに小さい飛行機です.
持っていく荷物の準備などをしている間に,サングラスをかけた長身中肉のパイロット(RICK HERZOGさんといいます)が待ち合い所に入ってきました.事務所のおねえさんと簡単な打ち合わせをしてから,私たちとあいさつを交わします.メモをみながら,「チエコタムラ ヒデフミトウミヤ」を最初のフライトに指名しました.体重の分配の関係なのでしょうが,ちょっとこちらの考えた予定とちがうけども..交渉する能力もないので,成りゆきにまかせます.
飛行機は,先発の2人を乗せて,プーンという軽い音を残して,視界から消えていきました.
残された2人は,ヒロの西側のショッピングセンターへ小島さんのザックを買出しにいきました.WALMART(でしたっけ?)で買い物をして,4時40分ころ飛行場につき,先発の到着をまちます. 5時ころ飛行機は到着しました.日はやや傾きかけていますが,まだ,夕暮れの雰囲気はまったくありません.興奮気味にRICKさんと話しながら待合所に歩いて来る東宮さんたちを出迎え,RICKさんと記念写真をとって,いよいよ私たちの順番です.
「エツコ,マサと呼ばせてほしい」「(英語が話せる)エツコは前の席へ」「ノリモノヨイブクロはこれ」... なんと小さな飛行機なのだろうか! 3列の座席があるが,運転席は大人2人,2列目は大人1人半,3列目はこども1人半くらいが乗れる幅. 前橋遊園地にある20円の回転飛行塔の飛行機くらいの機内空間の雰囲気です.
ハワイアン風フュージョン?の音楽が流れるヘッドフォンをつけてマイクで話します. 管制塔とまったく無線連絡をすることなく,飛行機は,トコトコとヒロ国際空港の滑走路を移動し,「小さい飛行機ははじめてか?」などと会話しながら,あっというまに加速して急角度で上昇します.
小島さんや中村(正)の興奮状態の矢継ぎばやの質問に「ハワイ島全体で10万人くらいだが,ヒロは3万人くらいの人口で,島一番だ」「この時間だと気流の具合が良好で,飛行機は揺れない」などとわかりやすく説明してくれます.
10分くらいで,east rift zone の上空にくる.眼下には,森林地帯に明瞭な輪郭を持って広がるアア溶岩流が見渡せます.「これは19**年**月の溶岩流.こちらは,1997年8月のもので,溶岩流に囲まれた家には今でも生活している家族がいる..」
小島,中村(正)は,窓に顔をおしつけて見入り,シャターを切る.中村(正)の座った2列目は,1人なので,左右のまどを使うことができますが,胴体に食い込むシートベルトがじゃまになります, しばらくして,視界がややもやがかかってきました.PuuOoからのけむりの影響です.PuOoの噴煙も確認できます.「あのガスは,ほとんどスティームだけどサルファジオキサイドやハイドロゲンサルファイドなどの有害な成分がある..」溶岩トンネルの海出口,カモクナ周辺のけむりが見えてきました.
「昨晩私たちは,あそこに行ってきた..」と小島さんが説明します.昨晩私たちがいた場所の30mくらい西(フランス人たちがいた場所よりももっと西)に,溶岩のテラスから大きく海がわに張りした岩場が海中に見え隠れしています.崩壊したベンチかもしれません.溶岩トンネルの出口に赤いものが見えます.
数回いろいろな方向から旋廻したあと,飛行機は内陸のPuuOo火口をめざして行きます.溶岩トンネルの窓からのけむりが,カモクナからPuuOoに向かって列をなしているのが見えます.昨晩赤い点列に見えていたものでしょう.
PuuOoの火口上空で,噴煙をさけながら,何回も旋廻します.ひたすらシャッターを切りますが,近すぎて35mmでは入りきりません.あっという間にフィルムが終わってしまいます.自動巻き戻しの時間が長くもどかしく感じました.フィルムを入れ替えていざ撮影を再開しようと思ったら,シャッターが落ちません.リセットしてもだめ,電池を入れ替えてもダメ..とどたばたしているうちに,やっと復活しましたが,貴重な時間をかなりムダにしてしまいました.(先発の田村さんもPuOoの上空でカメラが故障した,とのことです.なにかガスが特殊な効果を及ぼすのか,磁気の変化がなせるワザか..おそらく興奮状態による不注意でしょうが.)
離陸のときと同じに,至極簡単に着陸します.またも,管制塔とは,一回も交信をしません.「スバラシイ,スバラシイ,エキサイティング」と単語をならべながら,飛行機をおり,サインをもらったり記念撮影をしたりしてフライトを終えました.事務所の外のイスに深く腰を沈めて座って,私たちの様子を眺めていた女の人を,RICKさんは「わたしの妻だ」と言って紹介してくれました.そして,RICKさんは奥さんと話し始め,私たちは,田村さん,東宮さんの待つ待合所に入りました.
補足
今回お世話になった飛行会社のホームページは http://www.hilowings.com/です.
今回のような遊覧飛行を行う会社は,ヒロ空港に4軒ありますが,すべて,キラウエア上空を飛ぶことができないようです. ナマカニパイオキャンプ場そばにある「ボルケーノヘリコプタ」という会社は,キラウエアカルデラの上空を飛べる権限を持っているようです.ただし,飛行回数が限られているようですから,日程にゆとりが必要です.
数年前,日本で東京上空の遊覧ヘリコプター(佐川航空)に乗ったことがありますが,15分で9000円程度だったように記憶しています.