12.27 キラウエアカルデラを徒歩で横断(佐藤成夫)

 サーストン・ラバーチューブで、早川先生と分かれ、降りしきる雨の中、熱帯雨林を思わせる森の中をぬけて、ラバーチューブに入っていった。トンネルの中は、黄色い電光で、神秘気的な雰囲気をかもしだしていた。話には聴いていたラバーチューブであるが、実際に中に入ってみるとただのトンネルにすぎなかったので、がっかりした。しかし、このラバーチューブもできたてのころは、キラウエア・イキから流れ出していた熔岩の通路であったと考えるととても神秘的に感じられる。熔岩トンネルで雨宿りをしたあと、また雨の中をキラウエア・イキに向かって歩き始めた。

 道路を渡るとイキ・クレーターの中に向かうトレイルがあった.そこを下るがクレーターの中は、濃い霧で何も見えない.5分くらいでクレーター床につくと,昨日プープアイからみたイキのクレーター床すべてが見渡せた。いろいろな所から水蒸気が上がっている光景は、カルデラの地下がまだ暖かいことをわれわれに教えてくれている。

 カルデラの縁をみると、自分たちが歩いている所より10mほど高い所にテラスがあった。このテラスは、 1959年のプープアイの噴火のときにカルデラを埋めたドロドロの熔岩が、噴火の末期に火口内に逆流して、熔岩面を下がった時の下がる前の熔岩面の後である。また、この時熔岩面が下がった為に、すでに固まっていた表面の熔岩どうしが、ぶつかりあい割れ目をつくった。割れ目などは、カルデラ内でも火口に近いプープアイの付近で最も大きくそこから、東に向かって、小さくなっていく傾向が観らた。プープアイの下に行くと直径30mほどの火口を観ることができる。しかし、ここは足場が大変悪いので、近づくことができない。イキのトレイルも終わりの頃になってくると、雲の合間から、日差しがさしてきた。クレーターの底からでると、天気もよくなり、今まで歩いてきたキラウエア・イキ・トレイルが、見渡せた。

 カルデラからでると、また、森の中をしばらく、キラウエアに向かって歩き始めた。歩いている途中、トレールの両脇には、プープアイの噴火の時に堆積したテフラがあり、その中にはペレーの涙もあった。森を歩いていると右手にキラウエアカルデラが、見えてきました。

 急なカルデラ縁を下りると、イキとは違う広大なカルデラ底につく。ここから、ハレマウマウに向かってビヨロンレッヅ・トレイルを歩き始めた。歩いていると、底がみえないくらい深い割れ目がある。さらに、熔岩の海の中にたくましく生きている植物が生えていた。この植物はオヘロです。オヘロには、赤い実ができていたので試しに食べてみた。たいへん甘くて美味しかった。

 ハレマウマウに近づくと、プレッシャーリッジ*がみえてきた。このプレッシャーリッジは、1982年の噴火によってできたものである。近づいて中をみるとまだ、表面は、新鮮であった。内部は、二次的に溶けたのか、光沢のある熔岩も目に付いた、このプレッシャーリッジは、小高い丘なために、キラウエアを見渡すのに良い場所である。東の方には、今日我々が、歩いてきたキラウエア・イキとプーオーの山が、見渡せた。

 ハレマウマウを通りすぎて、クレーターリム道路をひたすらHVOに向かって歩き始めた.道路沿いは、何もないただの熔岩の海である。3kmほど歩くとやっとHVOについた.HVOの場所は、キラウエアの中でもっとも高い地点のところにあるためにキラウエアの地形が一望できてしまう。一日歩いて少し疲れた私は、この見晴らしのいい場所で休息をしてキラウエアの光景をスケッチした。

 観光客の多くは、車でキラウエアを一周して終わりのようであるが、実際に自分の足で歩いてキラウエアをまわると,車では観ることのできないさまざまなキラウエアの自然を実感することができる。もし少しでも時間があったら,キラウエアを散歩してはいかがでしょうか。きっとすばらしい世界に巡り会えると思います。 


*早川注:私は同行しなかったので確かなことは言えませんが,これはプレッシャーリッジではなく噴火割れ目ではないかと疑われます.