12.28 グリーンサンドビーチでの師弟対決(堀越郁夫)

 黄緑色・透明で美しいカンラン石(Olivine.宝石名はペリドット)だけからなる、美しい、夢のような砂浜の存在を旅行前に知り、そこへ行って砂を採集する計画をたてていた。

 12月28日、キラウエアからハワイ島北西部へキャンプ地を移動する途中で計画は実行された。アメリカ最南端のサウス・ポイントに立ち寄った後、東へ向かう道を1マイルほど走り、舗装が切れた所にある入江に車をとめる。あとは徒歩で目的地グリーンサンドビーチを目指すのだ。

 モンゴルを連想させるなだらかな丘が続く草原。かつての溶岩流の上にレスが堆積し草が生えている。海からの強い、乾いた風を受けながらひたすら歩く。単調な風景だが、おおらかな気持ちにさせられる。四輪駆動車の轍が海沿いにどこまでも続いている。その上を歩いていけばよいのだから歩きやすい。草が地面にへばりつくように生えているので、草の上も歩きやすい。強い陽射しと乾いた風。飲み水と帽子のありがたみを実感した。

 1時間ほど歩いただろうか、前方にグリーンサンドビーチのある入江を作るタフリングが見えてきた。突然、3番手を歩いていた成夫君が走り出した。彼の目的は、20m程先を行く先頭の早川先生を抜いて、タフリングの上に1番に到着することであった。彼が先頭に出ようとした瞬間、早川先生も走り出した。このあと200mほども、師弟による先陣争いが繰り広げられた。前々日に溶岩が海に流れ込むところを見にいったときにも、二人による先陣争いがあった。二人は師弟ではあるが、ライバルなのである。私がタフリングの上に着いたとき、二人は草の上に座り込んで荒い息をついていた。

 タフリングの上から、湾の奥に砂浜が見えた。確かに緑色だ。はやる気持ちを押さえ、慎重に砂浜へ降りる。砂浜へ降りるには、急な崖を下らなくてはならないのだ。浜にはカップルや、家族連れが数組、泳いだり緑の砂の上に寝そべっていた。目的のグリーンサンドを確認する。少量のサンゴと貝殻の小さな破片が混じるが、ほとんど黄緑色のカンラン石だ。素晴らしい。50mほどの砂浜全部がグリーンサンドなのだから、あわてることはない。採集は後回しにして、まずはこの珍しい海岸で泳ぐ。風や波は入り江の奥なので弱められてはいるが、かなりの強さだ。“海あり県”出身の早川先生は、サーフィンのように沖から波の勢いに乗って一気に波打ち際まで泳いでいる。ライバルの“海無し県”出身、成夫君は波が来るたびジャンプしている。それを見て、早川先生は「やっぱり山の子だな。」と勝ち誇っている。先ほどの先陣争いの勝敗は分からないが、これで先生が敵討ちをしたのではないかな。

 その後、グリーンサンドビーチを眺めながらのんびりランチ。しあわせ!食べながら採集の作戦会議。来る途中にあった浜のほうが、量は少ないがカンラン石の粒が大きくてきれいだということで、採集はそこですることになった。

 帰り道にその浜に寄り、500ミリリットルのペットボトルいっぱいに採集した。容量2リットルほどのワインのびんいっぱいに詰める人、大きなビニール袋に詰めてニマニマしながらザックにしまう人、日本の教材屋に高く売りつけて大儲けを目論む人など、欲深な人が多かった。

 そんな人は、ザックの重さに耐えかねて歩くペースがダウンした。ライバル二人のうち、早川先生は先頭で車まで戻ったが、成夫君は重そうなザックを背負って最後のほうに戻ってきた。今日の二人の勝負は、2勝1敗で早川先生に軍配が上がったようだ。