山頂火口縁の後退を監視しよう

三宅島山頂火口の面積は,7.08陥没の翌日以降,34日目の8.11まで,毎日3万1000平方メートルずつたいへん几帳面に拡大してきた(ふじたさん@アジア航測が第一発見者8.13.0030).

その几帳面さをグラフで表現すると,以下のようになる.直線的に増加してきたことがわかる.

火口底の深さは,9日目の7.17ころまでは毎日50メートル程度ずつ深くなっていたが,それ以後はほとんど深くならずに,400-500メートルの間を行きつ戻りつするようになった.陥没は相変わらず続いているのだが,火口壁の崩壊による土砂が火口底を埋め立てて,深さがバランスする状態が発生しているのだ.この状態がいまも続いている.

火口底の深さがバランスしてほぼ一定深度を保っているなら,火口面積の増大が火口容積の増大をほぼ反映していると考えてよい.精密には火口壁の傾斜変化を考慮する必要があるが,火口容積変化を迅速把握する目的のためには火口縁の後退を観測していればよいと言える.これなら,ヘリコプターをつかった空からの観察に頼らなくても,海岸部の集落からの目視観測で可能だ.

火口容積が増大している限り,毎日1000万立方メートルの大規模陥没が地下で進行していると思うべきである.なお1000万立方メートルは,20世紀に過去3回起こった三宅島噴火で噴出したマグマの量とほぼ同じである.それだけ大量の岩石が毎日毎日しずかに,すでに34日間も地下に沈みつづけていて,それが現在も続いていることをよく認識するべきである.これは,ただならぬ事態である.

2000.8.13.1400
早川由紀夫