Date: Sun, 2 Apr 2000 07:58:00 +0900
早川由紀夫様
初めまして。私は○○の記者です。ホームページを見ました。大変役立ちま
す。
ところで、「31日1430ごろに火砕流が発生した」とお書きになっていますが、岡田
さんと宇井さんは伊達での記者会見で火砕流は起きていないと話しています。堆積
物の様子や,火口のまわりの樹木が枝葉は落ちているものの、しっかり立っているか
ら、という理由です。
それでも、火砕流は起きた、と言えるのでしょうか。早川さんのお考えをあらため
てお聞きしたいのですが。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。
メールありがとうございます.
火砕流は大から小までいろいろあります.
規模で言うと10桁以上にわたります.
10桁はたいへんなちがいです.
同じ名前でも10桁違うものは,質的にちがうと言ってもいいくらいだと考えます.
岡田さんと宇井さんは(甚大な被害を起こすような)大きな火砕流はなかった,とお
話なさっているのだと思います.その点に関して,私は賛成です.
「火砕流が虻田高校に向かっている」という情報が流れた現地で,「火砕流はない」
とうち消したのは,まったく適切だったと思います.
防災アナウンスとしては,3.31噴火で(注目すべき)火砕流は発生しなかったという
のが適当だと考えます.
さて,○○さんは科学部の記者だそうですから,つぎに学術的に考えてみましょう.
あれだけの噴煙柱が立ったのですから,一部が崩壊して地表を流れ下るかどうかを注
意深く観察する姿勢は科学者として当然だと理解してほしい.
そういう目で見ると,とってもちっちゃいちっちゃい火砕流が出たことがわかったの
で,証拠写真とともにウェブで公開しました.
このような火砕流は,学界ではふつうサージと言われることが多い.
とっても小さかったから,破壊力も弱かった.家が倒されていません.
しかし堆積物が残されました.噴火が落ち着いたあとに現地へ行ってその堆積物をよ
く調べれば,火砕流があったことが証明できます.つまり,この問題は,映像と堆積
物の二つによって証明できる事柄です.
Date: Sun, 2 Apr 2000 11:35:27 +0900
早川由紀夫様
さっそくお返事をいただき有り難うございました。ご主張の中身がだいたい分かり
ました。ただ、あの映像で間違いなく火砕流である、と言い切れるのですか?しろ
うとなので、そこが今ひとつ理解できません。「火砕流に備わっているこういう特
徴がきちんと見て取れるので間違いない」という点を説明していただけないでしょ
うか?報道では、大きな被害をもたらす火砕流だけが有名なので、誤解を解くよう
な記事を書きたいと思っています。何度も申し訳ありませんが、よろしくお願いし
ます。
それと記事を書くときに必要なので早川さんの肩書きとご専門を教えて下さい(ホ
ームページを探したのですが、見つけられなかったので)。
>さっそくお返事をいただき有り難うございました。ご主張の中身がだいたい分かり
>ました。ただ、あの映像で間違いなく火砕流である、と言い切れるのですか?しろ
>うとなので、そこが今ひとつ理解できません。「火砕流に備わっているこういう特
>徴がきちんと見て取れるので間違いない」という点を説明していただけないでしょ
>うか?
それは,私が自分の学術論文ですることです.
とてもよくわかる写真をみつけました.
http://www3.hokkaido-np.co.jp/usu/graph/20000401/photo4.html
これでも理解できませんか?そんなにむずかしくはないと思うけど.
>報道では、大きな被害をもたらす火砕流だけが有名なので、誤解を解くよう
>な記事を書きたいと思っています。何度も申し訳ありませんが、よろしくお願いし
>ます。
小さい火砕流を住民が知らないのは,防災上,問題ないと思います.
ただ,一点,今の状況なら火砕流はないから近寄ってもいいと思われると困る.いつ
火砕流がでるかわからない,じっさいかわいいのはすでに出ている,というトーンの
記事なら意味あるかも.
火砕流の他に,とんでくる岩も危険.
たぶん,この記事は世にでなかったのだと思う.