2000/04/13 HTML版バージョン1.0

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2000年有珠山噴火による火山灰調査について
有珠山噴火火山灰合同調査班
*[日本大学・国立環境研究所・ 道都大学・東京都立大学・上越教育大学・北海道地質研究所]

はじめに

 3月31日の噴火開始を受けて,急遽合同調査班を組織し,4月1日〜4月8日に現地において火山灰調査を行った.調査は主に二つの目的で行われた.
  • 目的1 降灰状況を長期的に観測するための火山灰トラップの設置洞爺湖周囲から支笏湖周辺に至る約50地点に火山灰トラップを設置した(図1).一部のトラップはすでに何回かの降灰を受けているため1回目の回収を行った.
  • 目的2  調査期間中最大の噴火となった3月31日の火山灰降下状況を明らかにするため,洞爺湖周辺から支笏湖,札幌に至る地域において約70箇所で一定面積当たりの火山灰堆積量を測定した.

図1 火山灰トラップ設置状況

調査方法

 3月31日の降灰の測定方法は以下の通り.平坦な雪の上に火山灰が堆積している所で,50cmx50cm,場所によっては20cmx20cm,あるいは1mx1mの範囲から火山灰を雪ごと採取し,実験室で乾燥させて火山灰を抽出し,重量を測定した後,1mx1mあたりの火山灰堆積量に換算した.

 火山灰採取は主として4月2日〜4日に行われた.遠方については4月8日まで地点を補充した.札幌〜山間部をはじめ多くの地域で,火山灰は31日から4月1日にかけての降雪によって覆われ,厚さ1〜2cmほどの新雪の下に保存されていた.したがって,4月1日以降の火山灰とは明確に分けることができた.降灰の南限は伊達のやや北方〜登別温泉のやや北方を結ぶ線に認められた.4月1日以後の小規模な降灰があった有珠山近傍については大方4月2日午前までに調査された.極く一部の地点では31日の降灰に4月1日以後の降灰が加わっている可能性があるが,量的には僅かである.

調査結果

 3月31日の降灰量分布は現在測定中であり,全地点の測定完了にはなお時間を要するので,主要地点の測定結果に基づく暫定的な分布状況を図2に示す.

 分布軸は火口から東北東方向に伸び,洞爺湖東岸の発電所付近では約700g/m2,大滝で80g/m2を示した.支笏湖周辺で北方向に曲がり,札幌付近でも2〜3g/m2の値を示した.1g/m2の値は雪面に明瞭 に降灰が認められる量である.図2にはほぼ1g/m2の範囲を示したが,実際の分布限界はさらに広い.

図2 有珠山2000年3月31日13時07分噴火の降灰分布

降灰量の推定

 暫定的な結果から,火山灰降下量を概算で求めた.実測値に基づく等値線の面積から,火山灰の総堆積量は約11万トンとなった.この数字は現段階における少なくてもこれだけは降ったという意味の数字である.

 4月10日に合同観測班地質グループから発表された降灰量は7万5千トンである.>


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ィり,ほぼ類似した値といってよい.しかし,今回の結果が合同観測班地質グループの発表値に比べやや多めであるのは,今回の結果が札幌周辺までの遠方のデータを含んでいること,分布域の南側のデータを含んでいること等に原因があると考えられる.

 なお,この結果は火口近傍に厚く堆積した部分を含んでいないこと,本調査で見積もった範囲のさらに遠方にまで拡散した部分を含んでいないこと等のため,実際の総降灰量はさらに増加するはずである.合同観測班地質グループは,火口近傍の厚い堆積物を加えると20万トンから100万トンになると予想したが,我々の推定では20万トンから30万トンになる可能性があるものと考えている.

 

(清書中)

図3 分布面積/降灰量ダイヤグラム

まとめ

  3月31日噴火の降灰量は少なくても11万トンに達した.実際には20万トン〜30万トン降下した可能性がある.


脚注

* 事務局

日本大学文理学部地球システム科学科

遠藤邦彦・大野希一

Tel & Fax:03-3290-5451

Email:endo@chs.nihon-u.ac.jp

** 調査・分析担当

遠藤邦彦・大野希一・長井大輔・上野龍之・宮野義則・北沢稔彰・石田大輔・野口聡・中山聡子・林下京子(以上日大)陶野郁雄(国立環境研)・鈴木正章(道都大学)・小森次郎(都立大)・山縣耕太郎( 上越教育大 )・浜田誠一(北海道地質研究所)


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