避難指示地区に無断立ち入り、動物愛護団体が行動の正当性訴え
「行政に働きかけても、動かないので、われわれが直接行動せざるを
えなかった」。ペットを連れ戻すため二十二日、無断で避難指定区域の
胆振管内虻田町洞爺湖温泉町に入り、自宅に戻っていた男性(46)を発
見した動物愛護団体「アニマル・ライツセンター」のメンバー二人は、
自分たちの行動の正当性を訴えた。
二人は胆振管内壮瞥町の道道洞爺湖登別線の封鎖ゲートで、道警に事
情を聴かれた際も、最初に出た言葉は「逃げ隠れはしない。まず、連れ
帰った犬が衰弱しているので、動物病院に行かせてほしい」だった。
同センターの川口進代表理事は、「国に再三働きかけ、この一週間は
ゲート前で中に入れるよう交渉したが、らちがあかなかった。今回の行
動は二人が自分たちの判断で行ったものだが、ペナルティーは甘んじて
受ける」とペット対策の遅れを指摘する。
二人から電話報告を受けた同センターによると、犬猫の気配がある三
十カ所に水やえさを置いたが、屋内のペットの多くは、水不足などで死
亡しているようだ、という。ただ、外にいるペットは、思っていた以上
に生き残っていたようだ。
二人の行動に対し、道警などは「極めて危険な場所だ。”避難指示”
という規制なので、処罰することは難しいが、今後立ち入り規制の徹底
をはかる」と話している。
(北海道新聞)
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動物愛護団体の無断立ち入り、洞爺湖温泉町住民ら思い複雑
ペット救出のため、避難指示区域になっている噴火口近くの胆振管
内虻田町洞爺湖温泉町の住宅街に二十二日、動物愛護団体のメンバー
二人が無断で立ち入ったことについて、一時帰宅が認められていない
洞爺湖温泉町の住民から「避難指示を守っている住民を無視した行
為」と批判が上がる一方、ペットへの思いや帰宅のめどが立たない人
たちからは理解を示す意見も出ている。
二人は「アニマル・ライツセンター」(本部・東京)の会員。二十
二日早朝、ゲートを避けて徒歩で規制区域に入り、住宅からペットを
保護してほしいとの委任状を託した避難住民宅などを巡回。犬三頭を
助け出した。
この行為に、避難住民の反応は二つに割れた。
不動産賃貸業佐々木由次郎さん(72)は「入りたい気持ちを、みん
な我慢しているのに…。人命を預かる行政への謀反。入り口で厳しく
取り締まるべきだ」と憤り、委任状を渡した住民も「背信行為」と非
難した。
ホテル勤務の柳沢武郎さん(67)も「人命に何かあったら、責めら
れるのは警察や行政だろう」と首をかしげる。
一方、温泉街の自宅に猫を残してきた主婦宇田千恵子さん(56)は
「委任状集めは知っていたが、生存は厳しいと思って参加しなかっ
た。もう少し早ければ、お願いしただろう」と話す。
主婦成田秀子さん(53)は「今回のことで、他にも行動を起こす人
が出てくるにちがいない。ペットではなく荷物を、代理の人に運んで
きてもらうことができるかもしれない」と期待を寄せた。
虻田町の長崎良夫町長は「動物愛護団体の人は、家に帰りたいのに
帰れない町民の気持ちを考えたことがあるのか。警備も厳しくなるだ
ろう」と述べた。
取り残されたペットの救出を道などに要請している有珠山被災犬猫
救助連絡会の平井百合子代表(北海道動物保護協会長)は、今回の行
動を「消えゆく命を救いたいという気持ちだろう」と理解を示し、
「人間か動物かではなく、動物もかけがえのない存在で、生きる権利
があるということを今回の行動を機に知ってほしい」と語った。
(北海道新聞)