虻田町の阿部秀秋さんからファクスをいただきました.6.16.2158に送信されていましたが,私が受け取ったのは,6.19.0910でした.

複数のことがらを,阿部さんは指摘しています.そのすべてにいま答えることはできませんが,虻田中学校と土石流のことについては,いま答えたいと思います.

阿部さんが指摘しているとおり,虻田中学校は高台にあります.現地を見て,私は初めて知りました.板谷川から5メートルほど高いでしょうか?正確な比高を測りませんでしたから,確かな数字を私は言えません.

高い位置にありますから,虻田中学校の土石流の危険は,阿部さんがおっしゃるようにそれほど大きいものではないでしょう.230号線沿いの休業しているコンビニエンスストアがかかえる危険よりずっと小さいでしょう.

しかし虻田中学校は,板谷川が左にカーブしている地点の外側かつ下流側にあります.一気に大量の土石流が板谷川を流れ下ってきたときは,オーバーフローしやすい場所に,運悪く当たっています.この位置関係をみて,わたしは5.30に「虻田中学校は,運悪く板谷川が溢れ出しやすい場所に位置しています」と書きました.

なお私が現地に行った6月上旬の時点では,虻田中学校は(役場となりの)虻田小学校の校舎を使って授業をしていました.虻田中学校より危険度が低いと思われる虻田高校も,豊浦高校の校舎で授業をしていたそうです.

▼土石流が流れはじめてから避難すればよいと阿部さんはお考えのようですが,私は,そうは考えません.その警戒体制では避難が間に合わなくて,死者が出ると予想します.

土石流には,たしかにいろんな速さのものがあります.戦車のキャタピラみたいにゆっくりと前進する土石流もありますが,いま板谷川で想定して警戒すべき土石流は,人が歩く速さより速いものです.

土石流センサーが役に立つのは,その発生源から住宅地までの距離が長いときです.その距離が2kmもないいまの板谷川の環境で,土石流センサーが感知してから避難行動をおこせばよいと考える油断は,死を招くことにつながります.

1991年,雲仙岳で43人が犠牲になった火砕流から4週間後の6月30日,島原市の水無川で土石流が発生しました.数十軒の民家が二階まで土砂におおわれました.あのとき死者が出なかったのは,警戒区域の指定がなされていて,住民がそこにいなかったからです.いま虻田町では,あのときの水無川に似た条件の地域の避難指示は解かれ,住民がそこで日常生活を送っています(戻ってきていない家も中にはありました).避難指示が解かれたことを私は歓迎しますが,しかし戻った住民は危険を十分に認識しているだろうか?行政は,当該地域の住民に危険をわかりやすく十分に説明しているのだろうか?

再度言います.土石流の発生をみてから避難するのでは手遅れになります.土石流の発生を予見して,事前に避難することが命を守る秘訣です.土石流は,はげしい雨が降ったあとで発生しますから,その発生を予見するためにむずかしい技術が必要だというわけではありません.

6.19.1035/1325