Date: Thu, 13 Apr 2000 08:26:28 +0900
From: Yukio Hayakawa

At 0:35 +0900 00.4.13,
> 火山予知連の統一見解によれば、前兆現象があるだろうとのことで、少しばかり安
>心した所です。

ちょっと楽観的に振れた表現だったと私は思います.たとえば山体崩壊による津波が
発生する場合(これが洞爺村では一番こわい),その前兆をとらえて,理解して,し
かるべきところに情報伝達して,住民に警告して,避難が完了する,という手順が間
に合うかどうか,私は悲観的です.
 
市や町からの指示・連絡だけに頼ることなく,自分自身で有珠山の異常をすみやかに
察知できるよう,常時アンテナを張っておいてください.

>しかし、火砕流や津波の危険がなくなった訳ではありません。そこ
>で、質問させていただきます。山体崩壊をおこさないような噴火でも火砕流は発生す
>るのでしょうか、やはり爆発地点の高さと比例するのでしょうか。標高の低い有珠山
>から火砕流が発生したとしても、気体は拡散して到底村には被害は及ばないだろうと
>言う人もいます。

山体崩壊がなくても火砕流は発生します.

火砕流の強さは,爆発地点の高さにほとんど依存しません.単位時間当たりのマグマ
の噴出量におもに依存します.これを噴出率と言います.マグマの噴出率をあらかじ
め予知するのはほとんど不可能だと言ってよい.

噴出率が十分大きいと,火砕流の気団が大きな運動量を獲得して,洞爺湖の湖面を突
っ走ります.湖面上を走る間に石や火山灰を湖に落としていきます.そうして気団の
密度が大気より軽くなったとき,その火砕流は離陸して空中へ向かいます.どこで離
陸するかが災害の程度を大きく左右します.

火砕流は音もなく発生して,音もなく走るのが特徴です.