100年ごとの被害津波数のグラフを,宇佐美総覧(1987)の「表3-3 津波の規模別回数」から作成した.ここでいう津波の規模は以下の基準で定められている.規模0は図示しなかった.
規模0:波高1m前後で,ごくわずかの被害がある 規模1:波高2m前後で,海岸の家屋を損傷し船艇をさらう程度 規模2:波高4〜6mで,家屋や人名の損失がある 規模3:波高10〜20mで,400km以上の海岸線に顕著な被害がある 規模4:最大波高30m以上で,500km以上の海岸線に顕著な被害がある
17世紀からの増加傾向と9世紀集中は,地震と同様に,津波でもみられる.しかし最大規模である規模4だけに注目するとその増加傾向はとくにみられない.より小さい規模まで含めるにしたがって,より大きな増加傾向が見られる.すなわち,17世紀からの増加傾向は報告数の増加によるみかけのものだと考えられる.近世以降は,地方で起こった小さな津波でも中央に報告されて記録に残ることが次第に多くなってきたのだろう.
9世紀集中が真であるかみかけであるかを津波統計から判断することはむずかしい.