弁当パックによる日本列島の震源立体模型

 

川路美沙

2004年6月3日

 

T.はじめに

中学1年『大地の変化』地震の単元では、地震の起こる原因を、プレートの沈み込みと関連づけて捉えさせている。

 学習指導要領には「地震の体験や記録を基に、その揺れの大きさや伝わり方の規則性に気付くとともに、地震の原因を地球内部の動きと関連付けてとらえ、地震に伴う土地の変化の様子を理解すること」と記されている。弁当パックのフタを使った地震の震源分布の立体模型は、地震や地球内部の動きに関して、生徒たちの興味関心を引き出させるとともに、視覚的に地下の様子がとらえやすくなっている。

 また、生徒自身が立体模型を作り、自分の作った教材で学習を進めていけるため、きめ細かな指導ができると考えた。

 

U.OHPシートによる試作品

 高崎市立高南中学校で、地震はどんなところで多く起こるのか、震源の分布はどのようになっているのかを、生徒達が視覚的に捉えやすくするために作成した。これは、生徒個人に作成させることを目的としていなかった。

 なお、この試作品は山口県防府市立華西中学校の松村浩一先生による先行研究と堀の卒業論文にヒントを得て作成したもので、弁当パックは使用していない。

 

OHPシートを使った試作品

 

(1)作り方

@用意するもの

A4サイズの板目7枚、OHPシート7枚、油性マジック7色、両面テープ、セロハンテープ、縦3cm横1cm高さ1cmほどの直方体の板、日本付近で起こった地震の震央の分布地図(教科書に記載されている地図を用いてもよい)

A手順

OHPシート7枚と分布地図を一番下に重ねて置き、上をセロハンテープで止める。一番下のOHPシートに日本地図と深さが30km以下の震源を●印で描く。2枚目は1枚目の上に重ね、ずれないようにして深さが30〜60kmの震源を描き、3枚目、4枚目と重ねながら深さ別に震源を描いていく。深さ別にプロットする点の色を変える。7枚目は、海溝やプレート名を書き入れる。

次に板目の外側3cmほどを残し、真ん中を切り抜く。それの裏側に日本地図や震源を描いたOHPシートを1枚ずつ貼り付ける。シートとシートの間には、直方体の板をはさみ両面テープでとめ、重ねる。

B実践

 はじめに、「日本付近で起こった地震のおおまかな震源の分布の特徴を地震の起こる原因と関連付けて説明できることができる」ことを目的とした。

 まず生徒たちには、日本付近で起こる大きな地震の発生する場所について考えさせた。生徒たちからは「太平洋側に多い」「海溝に沿うようにして起こっている」「地震の発生が少ないところと多いところがある。」「火山の分布に似ている」などと考えたようだった。

 次に立体模型を、6人の生活班の1班から順にまわし、震源の深さと位置関係について考えさせ、立体模型がまわってきていない生徒には、教科書に載っている「日本付近で起こった地震の震央の分布」と、「北緯37度付近の日本列島の下の震源の深さの分布」の図をみて考えるよう促した。考えたことや感じたことなどは、ノートにメモさせ班やクラスで発表し合わせた。

C授業を終えて

 生徒たちは、次時に地震や火山活動の起こる原因をプレートの沈み込みによって説明できることを学習する。本時の学習は導入として有効であったと考えた。

立体模型の材料にしたOHPシートは、コピー機に使用しやすかったり文字を書きやすかったりするためにコーティングが施されていた。そのため、透明度が低く見にくかったので、窓に向けて見させたり、OHPでスクリーンに投影したりした。生徒は立体模型を見て「スゴーイ!」「わぁ〜」などと歓声をあげていた。   

時間の関係上1つしか作成できなかったため、40人近い生徒一人一人がじっくり見ることができなかった。授業終了後には「もっと見たかった」「先生、もう一回見ていい?」などの意見が多かった。

そこで、選択理科で堀が行った「弁当パックで山の立体模型をつくる」活動を、山を地震に置き換えて実践してみようと考えた。

 

V.弁当パックでつくった震源立体模型

(1)作り方

@準備するもの

 はさみ、セロハンテープ、色鉛筆(4〜5色)、油性のマジックペン(3色)、地図、弁当パックのフタ(7枚)、文庫本(2cmほどの厚さ)

A手順

(ア)  教科書や資料集にあるモノクロの震源分布地図弁当パックにあった大きさに縮尺拡大コピーし、適当な大きさに切り取る。(地図についてはB参照)

(イ)  震源を100kmごとに色鉛筆で塗り分ける。

(ウ)  色分けした地図弁当パックの裏側にセロハンテープで貼り付ける。

(エ)  水平な台の上で、地図を貼り付けた弁当パックをマジックペンで描きやすくするために、文庫本の上に乗せて黒のマジックペンで海岸線や海溝を描き入れる。なお、震源の印は深さ別に●や×、△で記し、青色のマジックペンを用いると見やすい。

(オ)  弁当パックの1枚目には海岸線と海溝だけを記入する。1枚目の上に2枚目を重ねて置き、そこに0〜100kmの震源を記入する。

(カ)  2枚目が記入できたら、一旦はずし3枚目を1枚目の上に乗せる。3枚目にも2枚目同様、震源と深さを記入し、描き終えたら外して4枚目を1枚目の上に乗せる。この作業を500km〜の深さまで繰り返し行う。

(キ)  全て記入できたら、地図をはがし弁当パックのふたを全て重ねて端をセロハンテープでとめたら完成。

B地図

 今回、左巻健男さん執筆代表の『現代人のための中学理科 新しい科学の教科書@』にある「日本列島の地震分布(吉井、1978)」の図を用いた。

 

 

弁当パックでつくった震源立体模型

 

(3)展開例

@.目的

 日本付近では、どんな場所で地震が起こっているか考え、震源の位置と深さの位置関係について、立体模型を作る活動を通して考える。

A.準備

 はさみ、セロハンテープ、色鉛筆(4〜5色)、油性のマジックペン(3色)、地図、弁当パックのフタ(7枚)、文庫本(2cmほどの厚さ)、フラッシュカード、立体模型の見本、手順の書かれたワークシート

B.展開

ねらい

生徒の活動

支援及び留意点

評価項目

1.本時の課題

を確認させる。 (5分)

 

<予想される発表>

・太平洋側に多い

・海溝に沿うようにして起こっている

・地震の発生が少ないところと多いところがある。

・火山の分布に似ている。         など

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 


     本時の課題を確認し、地図をみて、日本付近で起こる大きな地震の発生する場所について考え発表する。

 

 

 

 

 

 

○発表された意見を基に、海溝と震源の位置関係を考える。

 

     ワークシートを配り、そこに自分の考えを書き発表させ、一人一人に学習の方向を確認できるように助言する。

     机間指導の際に自分の考えをうまく表現できない生徒に対して、地図に書かれている用語や方角などを用いて表現するよう支援していく。

     自分の考えをわかりやすく表現し、発表することができる。

 

 

 

 

 

 

2.各自でワークシートに書かれている手順に従って、立体模型を作成する。(25分)

     ワークシートに書かれている手順を見ながら、立体模型を作っていく。

 

 

     見本を提示したり、うまく仕上がるポイントなどを助言したりする。

○手順に従って立体模型を作成している。

 

3.作成した立体模型をみて、震源の位置と深さについての位置関係を考察する。(10分)

 

 

     立体模型を作ったり見たりして、考えたことをワークシートに書き込む。

     課題に対しての自分の考えを発表しあう。

     自分と違う考えをメモしたり質問したりする。

     本時の課題を再確認するよう助言し、考察するよう促す。

     他人の意見も、ワークシートにメモするよう助言する。

     考察したことをワークシートに書き込んでいる。

 

4.本時の作業から分かったことをまとめさせる。(5分)

     本時の活動を通して、新たな発見やわかったことをワークシートにまとめる。

     本時の学習を次時につなげていくよう知らせる。

○本時の学習をワークシートにまとめている。