「第3回 平成16年度 JST IT科学技術・理科教育シンポジウム」に参加して(報告)
太田市立南中学校 宮永忠幸
1.日時 平成16年6月12(土) 10:00〜16:45
2.場所 東京工業大学(大岡山キャンパス) 70周年記念講堂
3.目的 理科教育用デジタル教材の開発の現状とデジタルコンテンツを活用した授業実践の様子を知り,今後の研修・研究に生かす。
4.成果(報告)
◇基調講演「教育用デジタルコンテンツの流通と活用」
科学技術学習支援事業推進委員会委員
独立行政法人 メディア教育開発センター理事長 清水 康敬 先生
教育用デジタルコンテンツの普及のために次のような点で努力していることがわかった。
・コンテンツ数の充実
・著作権の尊重と活用の自由度の向上を工夫し,作成者側の信頼を保ちながら,使用者側の利便性を追求した。
・会員制をとらないシステムにして,利用者数の拡大を図る。
・NIME(メディア教育センター)とNICER(教育情報ナショナルセンター)の検索システムを中心として,文科省,学校,大学,地域情報機関,海外の大学や学習者をつないだネットワークをつくる。
◇平成15年度開発コンテンツ紹介
・デジタルメディアで学ぶ自然災害のメカニズム
・センサー技術で学ぶ電気と磁気
・薬と化学
・発生と分化誘導 −先端技術の成果から−
制作者のプレゼンテーションから,先端研究を学校教育現場で教材として生かしてもらいたいという熱意を強く感じた。また,そのために多くの労力と時間と経費を使い,少しでも魅力的なコンテンツ作りにつとめていることがわかった。
教員として魅力を感じたのは,避難ゲームのような生徒が学習活動として成り立つ操作型コンテンツや,胚の発生地図を調べる実験映像のような高度な実験技術を必要とする資料コンテンツである。
◇デジタルコンテンツを活用した実践事例紹介
実物を用いた実験や生の自然観察を重視するという基本態度であることを,どの発表者も強調していた。
デジタルコンテンツ利用の効果として,次のような報告があった。
・生徒の学習活動が意欲的であった。
・映像のインパクトが強く様々な感想が得られた。
・理解度が速く,知識として残っている度合いが大きい。
・演示実験とコンテンツ映像を組み合わせて興味が深まった。
コンテンツ利用の場面やねらいをよく分析して授業に取り入れていると感じた。反面,あまり魅力的すぎるために自然をイメージする力が養われないおそれさえあると思った。生の自然や実物から学ぶ姿勢を,忘れないようにしたい。
◇授業モデルパッケージを活用した事例紹介
デジタルコンテンツを単元の学習にどのように取り入れるか,指導計画・指導案をデジタルコンテンツとセットで提供しようとする試みによる実践。小学校6年理科「人体のしくみ」
手軽にデジタルコンテンツを用いた授業をすすめられるようにしようとする意図はわかるが,先生の教えたいこととの折り合いを考えると,アレンジや加工したくなる。(そのまま使ってもらおうとは,思っていないだろうが)
◇共同研究機関における実践事例紹介,平成15年度開発コンテンツポスターセッション
作成者の熱意を強く感じた。先進的な研究を取材する一方で児童生徒の視点に立つことは難しいのかもしれないが,現場での使われ方をイメージしてつくられたものは,当然現場の先生に受け入れられやすい。その点が開発企業によって上手,下手があるように感じた。また,資料の量が膨大すぎるものも見られたが,教員としては役立ちそうなのは一部分である。
◇平成16年度JST科学技術学習支援事業紹介
事業内容の紹介がされたが,その中で「現場の先生方のニーズが知りたい」「現場の先生方の評価が知りたい」という言葉が強調されていた。現場の一員として,外へ向かって考えを発信することが求められていることを感じた。