科学研究費 特定領域研究 008 理数科系教育 A03 公募

火山噴火とその災害を三次元立体表示と動画でまなぶ学校内LAN教材の作成

研究代表者

早川由紀夫(群馬大学教育学部)火山学

研究分担者

古田貴久(群馬大学教育学部)認知心理学
小山真人(静岡大学教育学部)火山学

配分内定額

平成15年度 500万円
平成16年度 400万円

研究目的

火山噴火とその災害を,小中学生が教室で楽しくわかりやすく学ぶことができる教材を作成します.

題材としての火山への期待 平成14年度からスタートした新学習指導要領では,火山の噴火によって土地が変化することを,小学6年で学びます.そして中学で,火山のかたち・その噴火・噴出物,それによって引き起こされる災害を学びます.カリキュラムを大胆に削減する方針がとられた今回の改訂のなか,火山との学習は災害の観点からも学習することになったため,理科のなかで占める比率が例外的に増大しました.
 各社の教科書には,火山とその噴火が美しいカラー写真でたくさん取り上げられています.児童生徒は,これをみて火山につよい関心をもつでしょうが,それに応えて火山とその災害を教えるだけの十分な力量をもった学校教諭は多くありません.火山を教えるときに参考になる資料が少ない.火山をどう教えたらよいかわからないなどの声が,学校現場から,聞こえてきます.

火山のわかりやすさとむずかしさ この研究計画は,教科書のカラー写真が引き出す児童生徒の興味関心を,ITを活用して,正しく深い理解に昇華させる教材をつくることを目的とします.
 火山は,その誕生から消滅まで,何十万年の時間を経験します.火山は,何百年何千年の静穏を破って噴火して,短時間で周囲の自然環境を破壊します.大規模噴火の噴煙柱は成層圏最上部(高さ50km)まで上昇します.火山を取り巻くこのような長大な時間と長大な空間を正しく理解することは,児童生徒にはもちろん,教える側の教諭にとってもたいへんむずかしい.
 この研究計画で開発する教材は児童生徒のためのものですが,学校教諭もこれを使って火山の理解を深めることができるものに仕上げます.児童・生徒・教諭それぞれのレベルで活用できるオプションを用意します.

具体的成果物 バーチャル日本列島(三次元立体3Dモデル)上に日本の代表的な火山を表現します.火山名をクリックすると,その火山のページへ飛びます.各火山のページには,次のようなメニューがあらわれます.
 1)数値地図による火山体の3D表示 (ズーム・回転など,どんな視点からでも自由に観察できる)
 2)実写映像(空中写真・地上写真・噴火映像)
 3)火山誕生から現在までの噴火史と火山体の変遷を語るアニメーション
 4)火砕流・溶岩流などの噴火様式(加害要因)の動く図解説明
 5)実際に野外で火山を観察するときに役立つガイド地図
 6)火山と人間社会のかかわり(ハザードマップやまちづくりプラン)

教室で 実際の授業では,学校内LANを利用します.教材はDVD-Rメディアとして供給します.教諭はそれをサーバコンピュータに読み込ませます.児童生徒は端末コンピュータから,汎用ブラウザ(マイクロソフト社のインターネット・エクスプローラなど)をもちいて学習します.

独創性・発展性 個別パソコンにインストールするのではなく,LANでつかう教材は新しい.将来これに電子掲示板やメーリングリストを組み合わせれば,児童生徒が友人の学習内容を見たり,意見交換をすることができます.教諭も,各児童生徒の学習進度をパソコン画面で迅速容易に把握できます.
 教材として電子メディアを用いると,限られたページ数の紙(教科書)ではなかなか難しいタイプの学習が可能となります.児童生徒は,豊富な情報の海から自分に必要なものを見つけ出す能力を身につけることができます.この学習方法は,ものを多角的・総合的にみる姿勢を養う近道のひとつです.