桜島の地域遺産を生かす試み
―桜島エコミュージアム構想―
福島 大輔
1.はじめに
21世紀は「環境の世紀」とも言われており,環境問題が国際社会の中で重要な位置を占める時代になりました。鹿児島は数多くの火山が存在する日本でも有数の自然豊かな土地です。特に桜島は世界の中でも最も活動的な火山の一つであり、そこにある自然は大変貴重な財産です。これからの鹿児島は、この自然の財産を十分に生かして自然と共生する新しい環境先進都市を目指し、その自然環境を観光・教育資源として発展していくことが望まれます。
2.エコツアー
環境に対する取り組みとして、エコツアーやエコミュージアムという手法が欧米を中心に広まっています。エコツアーとは、できるだけ環境に負荷をかけない少人数制のツアーで、現地で本物を見たり、自然保護活動を体験するプログラムのことです。これが海外で盛んに行われているのは、エクアドル、オーストラリア、コスタリカ、マレーシアなどで、国や州が最大の産業と位置づけて行っています。日本では、沖縄(西表島)、鹿児島(屋久島・奄美)、和歌山、長野(軽井沢)、北海道などで行われていて、NPOや民間が主体となっています。これらの地域に共通することは「自然豊かな土地」ということですが、言い方を変えれば「何もないところ」なのです。しかし、現在は「何もない」ことが逆に大きな価値を生み出しています。エコツアーは地域の隠れた魅力を伝える方法の一つと言えるでしょう。
3.エコミュージアム
エコミュージアムとは、地域をまるごと博物館と捉え、自然・文化・産業など様々な「遺産」を現地で保存・展示・解説する新しいタイプの博物館システムです。従来の博物館と違うところは、(1)博物館という建物はなく地域を博物館と考えること、(2)博物館の中に資料を集めるのではなく、本物を現地で保存・展示すること、(3)解説する人(学芸員)は専門家ではなく住民であること、などです。エコミュージアムとは、地域の魅力を最大限に引き出し、住んでいる人が愛着と誇りを持ち、訪れる人がまた来たいと思えるような環境をつくる「まちづくり」と言えるでしょう。その効果は観光・教育・地域振興・防災など様々な分野に寄与します。
全ての「遺産」の前に看板や解説員を常に配置しておくことは難しいですが、展示物を見てまわる「順路」を用意して解説すること(エコツアー)は比較的簡単に実践できます。このようにエコツアーとエコミュージアムの考え方を合わせることで、さらに地域遺産をうまく生かすことができるでしょう。
4.桜島ミュージアムと桜島友の会
桜島をまるごと博物館と考える「桜島ミュージアム」を作ることを目標に、桜島の魅力を再発見するグループ「桜島友の会」を立ち上げました。活動内容は、桜島の自然と文化を楽しむイベント(エコツアーなど)を月1回程度行ったり、地域に還元できるようなボランティア活動をしています。桜島大根を育てて収穫して食べるとか、シーカヤックで海から桜島を眺めようとか、ビーチクリーンアップ、自然観察会、史跡めぐりなど、テーマは様々です。こうやって地域の人たちと見つけた桜島の魅力(遺産)を地元だけでなく訪れる人にも伝えられるようなシステムを作って行きたいと思っています。このような活動は桜島だけでなくどんな場所でも実践できます。みなさんの「まち」でもぜひチャレンジしてみてください。