4,授業展開
(1)1時間目
@テーマ 火山噴火とは
Aねらい
浅間山の2004年噴火を通して火山の噴火がどのようなものかを知り,噴火に伴う現象に興味を持たせる。
B学習内容
噴火とは,マグマが地表に出てくる現象である。
マグマが地表に噴火すると,溶岩か火山灰になる。
C展開
主な学習活動 |
教材・資料 |
教師の支援と留意点 |
2004年の浅間山噴火について知る。 〔浅間山の位置〕 〔9月1日噴火でどのようなことが起こったか〕 〔噴火で出てきたもの〕 |
PP「小中学生のための浅間噴火2004」 @伊勢崎市から見た浅間山 A浅間山の位置 Bテレビ報道・空振 ・エアバズーカ空振モデル体験 C火山弾(クレータ・火災) D火山灰 E農作物被害 |
資料をプレゼンテーション形式で提示する。 クイズ形式で群馬の火山名を知らせる。 空振を疑似体験させる。 火山弾・火山礫・火山灰に触れさせる。 高温であったことを知らせる。 降灰分布を示し,火山灰が風で運ばれることに気づかせる。 |
噴火について理解する。 ワークシートに重要事項をまとめる。 〔噴火とは〕 〔噴出物の名称〕 |
F噴火とは ・ 噴火モデル演示 ・ 減圧発泡モデル演示 G大きさによる呼び分け |
モデル実験によって,噴火が減圧によってマグマ内に生じた揮発性成分の圧力によることをイメージさせる。 大きさと運ばれ方が関係することを知らせる。 |
本時のまとめ 重要語句・概念の確認 〔その後の浅間〕 |
H浅間のその後 火映 I火口底のようす |
多くの情報のうち,基礎・基本となることをとらえさせる。 浅間山の現在の様子を知らせることで,火山の学習についての興味を持続させる |
D教材
【教材1】 PP「小中学生のための浅間噴火2004」
図1-1 タイトル @タイトル画面 写真:浅間山2004.9.14噴火 噴煙は上空の風に運ばれる |
図1-2 浅間山の位置 A浅間山はどれだろう 記号(ア〜カ)をクリックすると山の名前がアニメーションで現れる。 |
図1-3 噴火報道 B2004,9,1 噴火の報道 ○NHKニュース9 噴火動画(稲妻・火山弾噴出)・火山弾による火災動画 臨時火山情報 ○ NHKおはよう日本(翌朝) 空振 降灰 高速道路の速度規制を伝える。 空振によって,長野原町営浅間園のガラス2枚と嬬恋村立田代小学校窓ガラス1枚が割れている。 |
図1-4 高温の噴出物 C火山弾 着地点の植物が火災を起こしていることから,火山弾が高温であったことがわかる。 火口から1.7kmの地点に直径1.2mの火山弾によって直径8mのクレータができている。 火口から4km以内の地点は立入禁止の措置がとられている。 |
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図1-5 火山灰 D火山灰の分布からわかること。 噴火による総排出量は18万トン 200km以上離れた福島県に2時間で火山灰が運ばれた。時速100キロで移動した。上空の風の速さを考えると,噴煙はおよそ1万m上空まであがったと推測される。 降灰分布図:早川由紀夫,群馬大学 右下写真:福島中央テレビhttp://www.fct.co.jp/ |
図1-6 農作物の被害 E9月1日噴火による農作物の被害 群馬県消防防災課の発表によると,群馬県内で農作物に約7千万円の被害が出たという。火山の噴火は、人の暮らしにさまざまな影響を及ぼす。 群馬県消防防災課 http://www.pref.gunma.jp/hpm/ninaiteka/00039.html |
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図1-7 噴火とは(まとめ) F噴火とはマグマが地表に出てくる現象である。 地下には高温のマグマがある。 マグマは,まわりの岩石よりも軽いため上昇する。このとき周囲からの圧力が小さくなり,揮発性成分が発泡し圧力を増し噴火にいたる。 マグマは,地表に出ると火山ガスや火山灰や溶岩になる。 図:理科ネットワーク |
図1-8 大きさによる呼び分け G噴火によって飛び出したものは,大きさによって呼び分けられる。 火山岩塊(直径64mm以上で,空気を切り裂き放物線を描いて飛ぶ),火山礫(直径64〜2mmで,風に乗って近くに降り注ぐ),火山灰(直径2mm以下で風に乗って遠くまで運ばれる) |
図1-9 その後の活動の様子 Hその後の様子 浅間山は9月1日の最初の爆発以降も爆発を繰り返し,そのときの風向きによっていろいろな方向に火山灰を降らせた。 9月16日のストロンボリ式噴火では,軽石ガラスが多く含む火山灰がふった。軽石ガラスは,マグマが発泡しながら急いで固まったものである。また,引きのばされたようなガラスも見られる。(右下)この火山灰は,他の日の火山灰が岩片(冷え固まったマグマが砕け散ってできた)を多く含むのと違い,新鮮なマグマがもとになっていると考えられる。 火山はいったん噴火を始めると,いつまで続くか,どこまで大きく発展するか予想するのは難しい。 |
図1-10 火口の様子 I火口の様子 火口底に上昇したマグマの量の変化や温度を調べた結果が,このように公表された。地下からのマグマの供給や噴火によって,火口底の地形が変化していることがわかる。また,マグマの温度から,マグマの新鮮さなどを推し量ることもできる。このほかに,地震や山の傾斜(ふくらみ具合)などが調べられている。 左図:国土地理院 http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2004/1222.htm 右図:防災科学技術研究所http://www.bosai.go.jp |
火口のマグマが噴煙を赤く照らす「火映」も観測されている。 降灰分布図:早川由紀夫,群馬大学 噴火動画:利根川水系砂防事務所を元にまえちゃんネット作成 火映動画:まえちゃんネット |
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【教材2】火山弾・火山礫・火山灰(2004・9・1噴火のもの)
図2-1 火山弾(火口から北西1.8km) 図2-2 火山礫(火口から北東5.5km) 図2-3 火山灰(長野原町)
【教材3】エアバズーカ
筒内のゴム付きビニ-ールを手で引いて離すと,空気塊が発射される。空気塊があたるとその圧力を感じることができ,噴火による空振の原理を説明するモデルとして用いる。
カーテンに当ててゆらしたり,2〜3m先の生徒に当てることで,生徒に空振を体験させることができる。
図3 エアバズーカ空振モデル体験
【教材4】コーラ噴火
コーラの栓を抜き飲み口を親指で押さえ激しくふると,コーラが吹き出す。コーラに溶けていた炭酸の発泡によって缶内の圧力が高まり,コーラを噴出させる。マグマ内の揮発性成分の発泡によって圧力が高まり,噴火のエネルギーとなることを説明するためのモデルとして利用できる。
栓をしたまま激しくコーラを振ったのでは,コーラはあまり噴出しない。これは,発泡による圧力がもともと加圧して溶かしてあった炭酸をコーラに再び溶かすように働いてしまうためで,発泡による圧力をコーラの噴出に生かすためには,栓をあらかじめ抜いておいてから缶を振ることが必要である。
【教材5】簡易真空実験器とサイダーを用いた減圧発泡
図4 減圧発泡モデル実験 |
サイダーを簡易真空容器内に注ぎ,減圧ポンプを引くと,サイダー内から炭酸が発泡する様子が観察できる。マグマ内から揮発性成分が出てくるのは,マグマの上昇に伴って地殻からの圧力が減少するためであることを理解させるためのモデルとして利用できる。簡易真空容器は,漬物をつけたり食品を保存する調理器として市販されているものを用いた。
コーラ噴火を振ることで炭酸の発泡を促したが,噴火は減圧によって揮発性成分の発泡が起こっている。この点を補うためにも,コーラの噴火モデル実験とセットで行うことが望ましいと考える。
また,コーラ噴火では,比較的多くの炭酸を含んでいて濃色で観察しやすいコーラを用いたが,溶液内から炭酸ガスが生じる様子を観察するには,無色透明なサイダーが適している。