(3)3時間目
@テーマ 火山の形,溶岩の色,噴火の様子とマグマ(その1)
Aねらい
色々な資料をもとに,楽しく火山の形の違いをとらえる。
B学習内容
噴出するマグマの粘りけの違いで,火山の形が違う。溶岩ドームと溶岩流
C展開
準備 生徒:ネームペン黒と青又は赤の2本 文庫本1〜2冊 はさみ 色鉛筆
教師:弁当パックのふた(生徒数×7〜8枚) 等高線地図 セロテープ カシミール3D写真
主な学習活動 |
教材・資料 |
教師の支援と留意点 |
山の形を写真や等高線で見る。 |
三宅島・桜島・昭和新山の @写真資料(教科書) Aカシミール3D写真 ・周辺地形 ・鳥瞰図 ・等高線地図 |
・教科書の写真の山がどこにあるのかカシミール3Dの周辺地形で確認する。 ・カシミール3Dの鳥瞰図を見せて,火山の形を立体的に捉えさせる。 ・等高線地図も対比させ,等高線が地形を表していることを想像させる。 |
弁当パック火山模型をつくる。 できあがった模型をもとに,火山の形を考える。 |
弁当パックのふた 等高線地図(三宅島・桜島・昭和新山・浅間山・富士山・雲仙普賢岳) カシミール3D写真・鳥瞰図 |
・等高線地図が立体的な模型になることを告げてから,説明に入る。 ・弁当パック地形模型の作り方を説明する。 ・6つの火山のどれを作るか班で分担させてから作らせる。このときカシミール3D写真・鳥瞰図を参考にさせる。 ・できあがった山の形を比べ,「こんもりともりあがった形」「大円錐形火山」「うすく広がった形」のどれに当てはまるか検討させる。 |
D教材
【教材1】カシミール3D
図9-1 カシミール3D画面 |
3D地図ナビゲータソフト「カシミール3D」(DAN杉本)で作成。標高ごとに色を付けた画像や「カシバード」という機能で描く鳥瞰図を得ることができる。
図9-1はその基本画面で,数値地図をもとに描いた図に20万分の1地形図を重ねて表現している。左下のウインドウはカシバード画面である。これを用いた教育実践は,すでに多くの報告がある。
このソフトで表現した画像(カシミール3D写真と呼ぶ)を印刷して生徒に配り,等高線地図からの地形の読み取りを助ける資料とした。
図9-2 昭和新山周辺地形 |
図9-3 桜島周辺地形 |
図9-4 大島周辺地形 |
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教科書や他の資料に山の写真資料が出ていても,生徒はその山についての地理的な知識を持っていないことが多い。そこで周辺地形を提示して,生徒が持っている知識と関連づけてやる。図9-2〜9-4は,日本地図と関連づけられるように,広い範囲の周辺地形を表現した。 |
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図9-5 鳥瞰図 昭和新山 |
図9-6 鳥瞰図 桜島 |
図9-7 鳥瞰図 大島 |
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図9-5〜9-7は,カシバードで描いた鳥瞰図である。通常の写真資料は地上にいて写した写真であるが,カシバードでは,対地高度10万mまでの高さから見た鳥瞰図を描くことができる。時間や設備に余裕があれば,生徒自身に操作させたい機能である。 |
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図9-8 鳥瞰図 雲仙・普賢岳 上木場地区から見た普賢岳 火砕流のムービーと合わせて使う。 |
図9-9 鳥瞰図 浅間山 地形図の道路を合成すると,地形と生活が結びつく。特に生徒が知っている場所を扱う場合や,校外学習と合わせて利用できる。 |
図9-10 鳥瞰図 富士山 航空写真では,植物や建物で地形がわかりにくいことがあるが,リアルな表現をしながら微妙な地形が読み取れる。 |
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図9-11 等高線地図 桜島(左),大島・三原山(中央),有珠山と昭和新山(右)
等高線は基本的な地形の表し方である。中学1年の社会で地形図について学習する。検定済教科書・社会科「中学生の地理」(帝国書院H16.1.20)によると,等高線について@等高線は同じ高さのところを結んだ線である,A等高線を見ると土地の高さや起伏の様子がわかる,B等高線どうしの間隔で地表の傾斜の緩急がわかる,ことを学ぶ。また,単純な形に山を表す等高線と断面図を対応させた図や,地形図上の2点を結んだ直線の断面図を描き,その2点間の土地利用を読み取った資料を載せている。これをもとに,学校では,7月ころの授業で,実習用に作られた山を表した等高線から断面図を書き表す作業をしている。
ほとんどの生徒はこの作業を通して,単純な形の山の高まりや傾斜の緩急をイメージできるようである。しかし,実際の地形図の入りくんだ等高線からは尾根や谷を読み取ることはむずかしい。そこに対応する航空写真を見せると,光の当たり方や植生などから地形をイメージできる。
カシミール3Dでは,プラグインを使って等高線白地図を表示することができる。この白地図をペイントソフトで加工して作成したのが,図9-11である。カシミール3Dで作成した鳥瞰図や写真資料など対応させて,その等高線地図がどの山を表現したものか感覚的に理解させたい。
また,弁当パック地形模型を作ると土地の凹凸が視覚情報として直接的に得られるため,誰にとっても同じ立体イメージを持たせることができ,等高線に対する理解が一層深まる。
【教材2】弁当パック火山模型
図10-1 弁当パック火山模型(浅間山・生徒作品) |
松村浩一(山口県防府市立華西中学校)の発案によるもので,透明な弁当パックのふたに標高ごとに等高線を描いて重ねた模型。地形が立体的に見える。堀・早川(2005)が,この教材を用いた授業実践の報告をした。
今回の授業では「新しい科学」(東京書籍)に取り上げられている昭和新山・桜島・大島の他に,浅間(地域教材),雲仙普賢岳(火砕流で紹介),富士山(大円錐火山の典型)
を加え,全6種類から選んで作らせることにした。
弁当パック火山模型用等高線地図の作製にあたり,火山の形の特徴がわかるように,水平方向に対する等高線の間隔の比をほぼ一定にした。また,堀・早川(2005)の等高線地図を改良し,標高記入欄をつくり,地名ラベル・水を青色で表現した。(図9-2〜9-7)
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図10-2 昭和新山 |
図10-3 桜島 |
図10-4 大島・三原山 |
図10-5 雲仙・普賢岳 |
図10-6 浅間山 |
図10-7 富士山 |
(4) 4時間目
@テーマ 火山の形,溶岩の色,噴火の様子とマグマ(その2)
Aねらい
火山噴火モデルや噴火動画を見て,マグマの性質(粘りけ)との関係を考える。
B学習内容
噴出するマグマの粘りけの違いで火山の形が違う。溶岩ドームと溶岩流
噴火の様子は,マグマの性質や揮発性成分の振る舞いに関係がある。
C展開
準備 小麦粉火山セット PP「火山の形と噴火の様子・溶岩(噴火動画と写真資料)」
主な学習活動 |
教材・資料 |
教師の支援と留意点 |
弁当パック火山模型から火山の形の特徴を読み取る。 |
弁当パック火山模型とカシミール3D写真を対応させることで,火山の形と見え方を対応させる。 |
・雲仙・普賢岳は複数の溶岩ドームの集合だから山全体の形が円錐形に近い。地形を見て火山のでき方を知るためには熟練が必要であることを子供たちに教える。写真資料で,溶岩ドーム(平成新山)の部分を示す。 |
火山の形とマグマの粘りけの関係を考える。 @小麦粉火山の演示実験を見る。 A火山の形と火山の粘りけの関係をまとめる。 |
小麦粉火山噴火モデル PP「火山の形と噴火の様子・溶岩」 @タイトル A火山の形 (写真資料) |
溶岩ドームと溶岩流と関連づける。 ・火山の形を類型化した図表を生徒に配り,説明をしながら記入させる。 ●溶岩ドームは小さく,盾状火山は圧倒的に大きい点も重要である。 (図12-5) |
噴火の様子や溶岩の色と,マグマの性質や火山の形との関係を見る。 火山の形を類型化した図表に,噴火の様子,マグマの様子を書き加える。 噴火の様子と溶岩の様子がマグマの粘りけと関係があることをまとめる。 |
B噴火の様子と溶岩 (動画資料) |
・火山の形ごとに噴火動画や溶岩の画像を火山の形と対応させながら見せる。 ●噴火の激しさは,揮発性成分の振る舞いに関係がる。圧力をため込むと爆発的な噴火になり、そうでないと穏やかな噴火になる。 参考に,溶岩の色やマグマの温度にふれても良い。 |
D教材
【教材1】小麦粉火山噴火モデル
図11-1 小麦粉火山噴火 流れて薄く広がる溶岩(左)と流れずに盛り上がる溶岩(右) この写真は,練った小麦粉に墨汁で着色してある。 |
マグマの粘りけと火山の形を考える資料として,検定教科書では石膏やケーキミックスを板の上にしぼり落とし,その広がり方を溶岩や火山の形に見立てる例が載っている。しかし,噴火によるマグマの流出というイベント性を表現するにはものたりない。
小麦粉に加える水の量を加減すると,粘りけの違いが生じる。これをマグマの粘りけの違いに見立てる。そして,粘りけの異なる練った小麦粉を,スチレンボードの下からしぼり出す。スチレンボードの上にきな粉を広げて地表に見立て,きな粉の層を突き破って小麦粉が出るようにすると,マグマが地表に出る様子を再現できる。このアイデアは,北海道立理科教育センターhttp://www.ricen.hokkaido-c.ed.jpの実践によるものである。
[小麦粉火山噴火の手順]
〈必要なもの〉 マグマ1つあたり 小麦粉90g 水(粘りけ強は50ml 粘りけ弱は100ml) ビニル袋1枚 スチレンボード1枚(25×25cm 中央に直径約3cmの穴) 計量カップ セロテープ ラップ はさみ 練った小麦粉を入れる器(あると良い) |
@ビニル袋に小麦粉と水を入れ,袋の上からよく混ぜ合わせる。
これがマグマとなる。(図11-1)
マグマA‥‥小麦粉90gと水50ml
マグマB‥‥小麦粉90gと水100ml
A中央に穴を開けたスチレンボードにラップをかぶせ
セロテープで固定する。
Bスチレンボードの穴に合うようにかぶせたラップにもはさみで穴を開ける。
Cスチレンボードの穴からマグマの入ったビニル袋の口を出し,セロテープで固定する。(図11-2)
D小麦粉マグマを穴の所まで絞り出し,上からきな粉を5mmほどの厚さに載せ,地表に見立てる。
Eビニル袋をゆっくり絞り,マグマが地表に出る様子や出てきた溶岩の形を観察する。(図11-1)
図11-2 小麦粉をこねる生徒 袋の上からこねた方が良い。 |
図11-3 ビニル袋を固定したところ |
【教材2】PP「火山の形と噴火の様子・溶岩」(写真資料や噴火動画)
火山の写真資料や噴火動画はWEB上に多く公開されており,教室内で火山の授業をすすめる上で積極的に活用したいものである。それらの中から授業のねらいに合ったものを集たり(図12-6),生徒に身近な火山の写真資料(図12-4)やカシミール3D写真を加え,パワーポイントで提示しやすいようにしたものである。(図12-4〜12-6はその一部)
図12-1 タイトル |
図12-2 火山の形 火山の形を類型化し,具体的に火山の写真が提示できるように,リンクが貼り付けてある。 |
図12-3 噴火の様子と溶岩 それぞれの形をもつ火山の噴火動画にリンクが貼ってある。 |
図12-4 赤城山・鍋割1332m 溶岩ドームの例として身近な火山を取り上げた。 |
図12-5 マウナケア山(ハワイ・4200m) 盾状火山は溶岩を高温のまま遠くへ運ぶ仕組みを持ち,広大な規模の山を作る。 撮影:早川由紀夫 |
図12-6 桜島の噴火 2004年5月17日の噴火の動画 ポータルサイト「火山の教室」http://vulcania.jp/schoolで得た。 撮影:まえちゃんねっと前島 |