(5)5時間目
@テーマ 火山の作る地形・地層と人間生活
Aねらい
火山噴火がどのような地形の変化をもたらすかを知る。
B学習内容
火砕流には勝てない。
カルデラは,大量のマグマが火砕流となってあふれ出した後,地表が陥没してできた。
火山はくずれやすい。
火山が作った土地の上に人間の暮らしがある。
C授業展開
準備 生徒:色鉛筆
主な学習活動 |
教師の支援・資料 |
主な留意点 |
地形を変形させる火山活動を知る。 浅間山の過去の火山活動によってできた地形を知る。 |
山体崩壊,火砕流,ラハールの動画 ・セントへレンズ1980年噴火の山体崩壊 ・雲仙普賢岳1991年噴火の火砕流と土石流 PP「火山がつくる土地と人間生活」 A浅間ではこんなこともあった。 WEB紙芝居地形編(浅間山) ・山体崩壊 ・火砕流 ・溶岩ドーム形成 B1783年噴火のつめあと C利根川沿いの鎌原土石なだれ跡 |
●火山は不安定で,特に大円錐形火山は崩れやすい。 ●特に火砕流には勝てないことを強調する。 浅間山で起こった過去の活動を説明する。 |
過去の火山活動の跡を等高線地図に表す。 |
C浅間山のすそ野 D塗り絵地質図 (アニメーション機能を使って着目している地形を強調し,作業を支援する。) |
地層の上下と新旧の関係を確認する。 等高線地図と地形を対比させることで,等高線の特徴が表す地形を捉えさせる。 |
赤城山のすそ野の地形を考える。 |
E赤城山のすそ野 赤城南面の地形(カシミール写真) |
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火山がつくった地形と人間生活 ・火山のすそ野が人間の暮らしに重要な役割を果たしていることを知る。 |
F火山のすそ野と人間生活 |
●火山が作った土地の上に人間の暮らしがある。 |
カルデラ地形のでき方を考える。 |
GHIカルデラ ウェブ紙芝居地形編(阿蘇カルデラ) |
●カルデラは,大量のマグマが火砕流となってあふれ出した後,地表が陥没してできた。 |
D教材
【教材1】ウェブ紙芝居・立体地形編 浅間山・阿蘇カルデラ
ポータルサイト「火山の教室」(早川由紀夫・群馬大学教育学部)http://vulcania.jp/school/contents/flash/cubic.shtml に公開されている紙芝居形式のアニメーション。浅間山,阿蘇カルデラ,富士山の3つの火山の資料がある。それぞれ過去の噴火によってどのような地形の変化があったのかを視覚的に捉えることができる。
この教材は,教室で学習する上で障害となる時間的な問題(大きな噴火はたびたび起こらない。過去の噴火資料を生徒が調べたりまとめる時間的余裕がない。教師に教材を作成・準備する時間的余裕時間がない。)や空間的な問題(火山は教室に持ち込めない。校外学習を頻繁に行えない。)を解決する有効な教材であると考える。本実践では浅間山の,PP「火山がつくる土地と人間生活」の中でリンクによって使用した。
図13-1 ウェブ紙芝居立体地形編 浅間山の画面 地形を変化させる火山活動の例として @2万4000年前の山体崩壊 A溶岩ドーム形成 B平原・追分・吾妻火砕流 C鬼押出溶岩流出 D鎌原土石なだれ を取り上げた。 |
図13-2 ウェブ紙芝居立体地形編 阿蘇カルデラの画面 @マグマが大量の火砕流となって噴出する Aマグマが無くなったあと,地表が陥没して凹地になった。 |
【教材2】PP「火山がつくる土地と人間生活」
流水や火山活動によって地層や土地ができること,地震や火山活動によって土地が変化することを小学6年で学ぶ。しかし,中学1年生に尋ねると,教科書の写真資料からそのことを知っただけで,身近なところにある具体的な事実を知らない。また,火山活動による土地の変化は,地震による変化との選択調べ学習扱いなので,全ての児童が学習したわけではない。そこで,あらためて火山がつくる地層や地形について教え,さらにそこに人間の暮らしがあることを理解させたい。
題材として,浅間山の北側のすそ野を取り上げた。2004年噴火を地域教材として取り上げたことと,火山活動の跡がよくわかる地形を残しているからである。また,このプログラム開発に際して授業実践した太田市の中学校が群馬県東部にあり,赤城山のすそ野が身近な火山地形であることから,赤城山についても後半で触れることにした。
図14-1 タイトル @タイトル |
図14-2 A浅間ではこんなこともあった ウェブ紙芝居へリンクして,地表で見られる地形や地層を対応して説明する。 |
図14-3 B1783年(天明)噴火 天明噴火の跡を鳥瞰図と現地の写真で提示していく。ボタンをクリックして写真を表示できる。 |
図14-4 B1783年(天明)噴火 峰の茶屋に軽石の地層・上半分の約80cmは10時間ほどの連続噴火で一気に積もった。(右) 平原火砕流(1万6000年前)の地層の上にのっている鎌原土石なだれ(約200年前)の地層(左) |
図14-5 B1783年(天明)噴火 鬼押出し溶岩(右) 鎌原土石なだれに埋もれた階段(左) 50段のうち上の15段が残った。観音堂に逃れた19人は助かり,463人はいわなだれにのまれた。埋もれた階段の発掘調査で,2遺体が発見された(左下) |
図14-6 C利根川沿いの鎌原土石なだれ跡 土石なだれは,吾妻川から利根川を流れ下り,江戸まで達した。 伊勢崎市戸谷塚には約700の遺体が流れついた。 この土石なだれで,全体では1400人がなくなった。 |
図14-7 D浅間のすそ野 火砕流の積もった平らなところ 土石なだれで凹んだところ 山体崩壊あとの流れ山 植生や建物にじゃまされずに,地形が読み取れる。 |
図14-8 塗り絵地質図 地表に見られる新しい出来事から順に色を塗っていく,塗り絵地質図を作るためのスライド イベントごとに,地形図上に点滅表示される。 |
図14-9 E赤城の裾野1 赤城山南面のすそ野も,火山活動で作られた土地である。 火山扇状地がよくわかる。 カシミール3Dで作成 |
図14-10 赤城の裾野2 火山扇状地に加え,流れ山も見られる。伊勢崎市(中央下の赤い部分)はその南に位置している。 市街地をマッピングし,どのようなところに人間が町を作っているのかがわかるようにした。 |
図14-11 赤城の裾野・等高線 カシミール3Dで描いた地形図で等高線は10m間隔 授業実践した群馬県東部までを入れて作成した。 |
図14-12 F火山のすそ野と生活 キャベツの産地・観光地として知られる浅間山のすそ野 多くの町村を抱える赤城山南面の様子を説明する。 詳しくは,8時間目の授業「火山の災害と恩恵」で扱う。 |
図14-13 G阿蘇カルデラ ウェブ紙芝居にリンクして,カルデラのでき方を説明する。 ●大量のマグマを火砕流として噴出したために、マグマだまりの屋根が陥没してできた。カルデラは大きい。 |
図14-14 H洞爺湖カルデラ カルデラ湖と中央火口丘 カシミール3D写真と実際の現地写真 遠景の円錐形火山は羊蹄山 他に屈斜路湖・支笏湖もカルデラ湖である。へこんでいるから、水がたまって湖になっていることが多い。 |
図14-15 I十和田湖カルデラ カルデラは,まわりよりも凹んだ形をした火山 カルデラ噴火は、日本全体で1万年に1回くらいしか起きないめったにない噴火。だけど、いつかかならず起こる。 |
【教材3】塗り絵地質図(浅間山)
等高線を注意深く眺めると,等高線の縞模様が変化するところがあることに気づく。そこは地面の傾きが変化するところであり,過去に起こった何かの出来事を物語っている。その出来事を紹介しながら塗り絵をして行こうとする教材である。できあがった塗り絵は地質図そのものである。地質図は高等学校地学で扱う教材であるが,ここでは塗り絵感覚できれいに塗って楽しもうという感覚でつくりたい。
ここでは,地表に見られる歴史的に新しい出来事から順に塗っていく。しかし新しい出来事の下には,ふるい出来事による堆積物がある。表面には見えない部分の地層の広がりをイメージするために,ウェブ紙芝居と関連させて説明しながら塗り絵をさせる必要がある。
浅間・塗り絵地質図 等高線地図には,地形を変えるような過去の大きな噴火の跡が表されています。 年代ごとに色分けをして塗っていこう。 等高線は20mごと (1)江戸時代の噴火 @鬼押出溶岩 A吾妻火砕流 B鎌原土石なだれ (2)平安時代の噴火 C舞台溶岩 D追分火砕流 (3)1万6000年前の噴火 E平原火砕流 (4)2万年前の 溶岩ドーム
F小浅間山 (5)2万4千年前の 山体崩壊 G流れ山が 見られるところ |
図15 浅間・塗り絵地質図 過去にさかのぼればさかのぼるほど、大きな災害をみつけることができる。大きな災害はめったにおこらないからである。大きな災害の証拠は、火山から離れた場所に残っている。 |