(6)6時間目
@テーマ 火成岩
Aねらい
火山岩,深成岩の特徴を組織のつくりで区別し,それを岩石のでき方と結びつけて理解する。
B学習内容
花こう岩は,マグマが地下深くでそのままゆっくり冷えてできた。(等粒状組織)
安山岩は,マグマが地表に噴出したため急に冷えてできた。(斑状組織)石基の部分はガラス。
C展開
準備 岩石標本と岩石薄片(安山岩,花崗岩,流紋岩,閃緑岩,玄武岩,はんれい岩)
ミョウバンの再結晶した溶液 偏光顕微鏡
主な学習活動 |
教材・資料 |
教師の支援と留意点 |
安山岩と花崗岩標本を見てスケッチする。肉眼やルーペで安山岩と花崗岩の特徴を捉えてスケッチさせる。 |
岩石標本(安山岩,花崗岩) 安山岩・花崗岩の産状 |
安山岩の産状(赤城山・旧宮城村)と花崗岩の産状(旧勢多郡東村)の写真資料を説明する。 組織の違いに気づくよう,机間巡視をしながら助言する。 |
安山岩と花崗岩の偏光顕微鏡像をスケッチする。 |
石薄片 ・安山岩 ・花崗岩 デジタルカメラのAV出力を利用して,偏光顕微鏡像をテレビに映して見せる。 デジタルカメラで撮影した画像をスケッチさせる。 |
観察で気づいたことを,偏光顕微鏡像と対応させる。 ●安山岩に見られる粒は鉱物結晶であり,その他の部分はガラスである。 ●花崗岩は鉱物結晶の粒だけからなる。 |
冷える速さの違いと,結晶の大きさの関係を考える。 組織の違いをもとに語句をまとめる。 |
冷える速さとミョウバン結晶の大きさの違いを準備しておいて,結果を見せる。 |
●ゆっくり冷えることで結晶は大きくなることに気づかせ,斑状組織ができるには,何万年もの長い時間がかかることと結びつける。 ●冷える場所の違いと関連づける。 火成岩,火山岩,深成岩,斑状組織,等粒状組織,斑晶,石基,ガラス |
他の火成岩を紹介し,火山岩と深成岩に分けてみる。 |
流紋岩 玄武岩 閃緑岩 はんれい岩 |
・見た目と偏光顕微鏡像から判断させる。 |
D教材
【教材1】岩石標本と岩石薄片
図16 火成岩の産状 花崗岩・沢入(左),安山岩・赤城(赤城) |
市販の岩石標本の利用と合わせて,群馬県内で採取した火成岩を用意した。より身近な自然として火成岩を感じてほしいと考えたからである。教師が自ら採取し,産状の情報を伝えながら教材として用いると,生徒は高い関心を示す。近くの河原で採取するのも一つの方法である。
教材として売られている標本を使うと,一通りの火成岩を見ることができる。しかし,標本は1つの例を示したもので,同じ名前で呼ばれていても見た目の印象が違うことはよくある。中学生にとっての岩石名は幅を広く持っていてよく(例えば,デイサイトをあえて安山岩と区別せず,「安山岩の仲間」という感覚で手元の岩石を見る),名前の違いにこだわりすぎて逆に自然に親しみを感じることの弊害にならないようにしたい。多少の理解不足はあっても,足下の石を手にとってこれはどんなふうにしてここにあるのかに思いを巡らせる生徒を育てたい。そして,印象の違いに興味やこだわりを持った生徒には,その違いを追求させてより深い理解を求めるきっかけにしたい。同じ名前を持つ複数の石に出会うことは,そういう意義があると考える。
火山岩と深成岩の違いを肉眼やルーペ観察だけで何となく組織が違うと理解させると「覚えさせられた」という意識につながりかねない。資料集の偏光顕微鏡写真でも組織の違いが明らかであるが,偏光顕微鏡を知らない生徒には実感を伴う理解にならない。そこで,組織が異なることを偏光顕微鏡で直接見せ,感動を持って理解させたいと考え,岩石薄片を教材に用いることにした。偏光顕微鏡については,2時間目「火山噴出物とマグマ」で説明したので,抵抗はないと考える。
図17-1 花崗岩・沢入 |
図17-2 安山岩・赤城 |
図17-3 流紋岩・奈良俣 |
図17-4 閃緑岩・幸知 |
図17-5 花崗岩・奈良俣 |
図17-6 安山岩(火山弾) ・浅間 |
図17-7 玄武岩・藤原 |
図17-8 玄武岩(枕状溶岩) ・鬼石 |
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図18-1 花崗岩・沢入 上 平行ニコル 下 直交ニコル |
図18-2 安山岩・赤城 上 平行ニコル 下 直交ニコル |
図18-3 流紋岩・足尾(栃木) 上 平行ニコル 下 直交ニコル |
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図18-4 玄武岩・豊岡(兵庫) 上 平行ニコル 下 直交ニコル |
図18-5 閃緑岩・幸知 上 平行ニコル 下 直交ニコル |
図18-6 はんれい岩・小野 (福島) 上 平行ニコル 下 直交ニコル |