(8)8時間目
@テーマ 火山の災害と恵み
Aねらい
火山の危険な面と有益な面を知り,自分がどのような態度で火山(自然)と接していったらよいかを考える。
B学習内容
小さな噴火はしょっちゅう起こるが,大きな噴火はめったに起こらない。
火山はふだんを眠って過ごす。
いったん噴火を始めると,それがいつまで続くか,どこまで大きく発展するか予想するのは難しい。
〔展開〕
主な学習活動 |
教材・資料 |
教師の支援と留意点 |
火山災害の動画を見る。 |
PP「火山の災害と恵み」 @タイトル A火山の災害 |
火砕流,溶岩流,ラハール,火山灰,火山礫 |
「浅間山防災マップ」を見て,メモしたことを確認する。 「生命に危険がおよぶ火山災害が起こった地域(早川,1993)」を見て,なぜ浅間から遠く離れたところでも災害が起きたのかを考える。 |
B防災マップ 「浅間山防災マップ」 生徒に配布 C生命に危険がおよぶ火山災害が起こった地域(早川,1993) 「生命に危険がおよぶ火山災害が起こった地域(早川,1993)」 生徒に配布 |
生徒に配布して,ビデオで紹介された火山災害を確認させる 火山災害は,火山の周辺で起こるだけでなく,下流まで土砂が運ばれたり堆積することで,命に関わる危険が広範囲に及ぶことを教える。 |
火山の危険な部分をどう理解したらよいか,今までのことをまとめる。 |
D火山の性質 |
●小さな噴火はしょっちゅう起こるが,大きな噴火はめったに起こらない。 ●火山はふだんを眠って過ごす。 ●いったん噴火を始めると,それがいつまで続くか,どこまで大きく発展するか予想するのはむずかしい。 |
ビデオ「資源としての火山」を見て,火山の恵みを,プリントに書き取る。 |
E火山の恵み NHK 10min,ボックス 「資源としての火山」 資源としての火山の姿を紹介した番組 |
観光資源(鬼押出し,山の姿,湖,温泉),地熱発電,地下資源(硫黄) 農地となる土壌 |
火山とのつきあい方を考える。 |
F写真資料 ・規制区域内でピクニック ・浅間炎の祭り ・火映写真 |
危険を知った上で火山を楽しむ良さを知らせる。 |
D教材
【教材1】 PP「火山の災害と恵み」
火山という自然と人間がどう関わっているかを,危険と恩恵の両面から理解し,自分がどう対峙していったら良いかを考えさせたい。具体的には,火山についてよく知り,危険をうまく回避しながら自然を利用して生きる・楽しもうとしてほしい。このような視点をもってこの教材を作成した。
図25-1 @タイトル 火山には,私たちにとって危険な面と有益な面の両方の面がある。 |
図25-2 A主な火山災害 それぞれの災害の動画にリンクさせてある。 動画は,テレビ報道のクリップ |
図25-3 A主な火山災害 それぞれの災害の危険程度を星の数で表すと,どうなるかを生徒に見当をつけさせる。災害名をクリックすると,危険程度を表す★があらわれる。 |
図25-4 B防災マップ 浅間山防災マップ(嬬恋村発行2003年) 生徒には縮小印刷したものを配布し,災害の種類を確認させる。 噴火予知はできないので,色々なケースを載せている。 それぞれのケースのリスクに応じた行動が必要になる。 |
図25-5 C「生命に危険が及ぶ火山災害が起こった地域」(早川,1993) 火山から離れたところでも,命の危険があることを教える。 浅間山で土石なだれが起こると,前橋に1時間で達する。 古い出来事ほど大きな被害が広い範囲に及んでいる。 |
図25-6 D火山の性質 ●小さな噴火はしょっちゅう起こるが,大きな噴火はめったに起こらない。 ●火山はふだんを眠って過ごす。 ●いったん噴火を始めると,それがいつまで続くか,どこまで大きく発展するか予想するのはむずかしい。 |
図25-7 E火山の恵み NHK「10min.ボックス・資源としての火山」にリンクする。 ビデオを見せて,火山の恵みを具体的に示す。 |
図25-8 E火山の恵み それぞれの事象が,人間にとってどう利用されるかを整理して表示する。 |
図25-9 F火山との関わり方 今までの学習を通して,次の3つの関わり方を評価する。 ・火口から3.8kmでピクニック (自然を知らないという危険) ・夜の火映撮影(火口から4.1km) (自然の危険を理解して楽しむ) ・浅間山炎の祭り (自然と共にある生活,観光客もよべる) |
【教材2】 NHK「10min.ボックス」
NHK教育で放送される中学・高校向け教育番組で理科系シリーズと社会科系シリーズがある。そのうち,2004年12月に放送れた「火山を見る」全5回の内の一部を利用した。2004年9月噴火もあってか,浅間山での出来事を中心に例示しながら火山についての理解を深めさせてくれる番組である。
本時の授業では,第3回「資源で見る火山」・第4回「火山の災害」・第5回「火山と防災」の一部を使い,火山を災害と恵みの両面から考えるための資料となる出来事を生徒に提示した。
【教材3】 ハザードマップ
産業技術総合研究所(産総研)の地質調査総合センターが、火山防災マップデータベース(http://www.gsj.jp/database/vhazard/)で全国64の火山のハザードマップを公開している。今回は,「浅間山火山防災マップ2003年版・嬬恋村」を印刷して生徒に配布した。この防災マップには,@浅間山で予想される噴火の進み方A噴火したときに発生する災害現象B火山ハザードマップ・小〜中規模噴火の場合Cもし天明の噴火のような大噴火が起こったら…(火山ハザードマップ)D避難施設情報E火山活動に関する情報についての説明F過去の噴火の資料などが記されている。
授業では,A噴火したときに発生する災害現象の部分を中心に取り上げた。また,ハザードマップや火山情報について簡単な説明をし,これに従えば大丈夫という保証をするものではなく,また,過去の噴火の通りの現象が同じ範囲で起こるという保証もないということを付け加えた。過去の事実を理解して,危険性の高いことをしないことと,必要以上に怖がらないで,危険とつきあうことが重要であることを伝えたい。
図26 浅間火山防災マップ2003年版・嬬恋村
地質調査総合センター「火山防災マップデータベース(http://www.gsj.jp/database/vhazard/)」より
【教材4】生命に危険がおよぶ火山災害が起こった地域(早川,1993)
浅間火山,草津白根火山,榛名火山,赤城火山のハザードマップ。現在から100 年前までの間に起こった地域を赤色,100〜1000年前までの間に起こった地域をオレンジ色,1000〜1万年前の間に起こった地域を黄色,1万〜3万年前の間に起こった地域を緑色で示している。
図27 生命に危険が及ぶ火山災害が起こった地域(早川,1993) |
大きな噴火は,山麓から遠く離れた地域にまで命の危険をもたらすことがあり,そのような噴火は3万年さかのぼると1回起こる。火口4km以内に死者を出すような噴火は,100年さかのぼるだけで起こっていることがわかる。また,火山から離れていても危険があることがわかる。だからといって前橋や高崎には行かないとか,軽井沢を訪れないという判断は間違っている。ただし浅間山の状態によっては,軽井沢に遊びに行くときに、そこにどんな危険がいまあるかを調べたてから行ったほうがよいときもあることを教えたい。