駒ヶ岳噴火報道に関する意見

                早川由紀夫


火山防災は,火山専門家・行政官・ジャーナリスト・住民の四者間の情報伝達がうまく機能したとき初めて成功する.ここでジャーナリストが果たす役割は大きい.新聞・雑誌などの印刷メディアに属するジャーナリストと,テレビを活躍の場とする放送ジャーナリストは,それぞれのメディアの特性を生かし,良識をもって積極的に,災害情報を住民に伝えてほしい.
         新版地学教育講座2 地震と火山(東海大学出版会)93-178
(4)危険地帯へ侵入した事情判明
 北海道新聞1996.3.7朝刊1面に以下の記事が掲載されていたという.
 「噴火から一夜明けた六日午前,渡島管内森町教委体育課長の五十嵐憲二さん(52)らが町の了解を得て,前夜に続いてスノーモービルで駒ヶ岳山頂に登り,水蒸気が噴出する模様をカメラに収めた.登頂したのはスノーモービルに4台に分乗した6人で,うち二人が森町役場職員.同日午前11時前に役場を出発し,11時45分から約50分間,山頂付近を調査した.」
 どういう理由または目的で,町はこの行為を了解したのだろうか?北海道駒ヶ岳と森町は火山防災の先進地域だと,私は高く評価していたが,それは誤りだったのだろうか.(1996.3.9.1754)
(3)危険地帯で撮影した映像をNHKテレビも放送
 わたしは見ませんでしたが,NHKの3.7.1200のニュースでも(2)と同じ映像が流れたそうです.
 NHKは,日本電信電話株式会社・日本銀行・日本赤十字社など36機関とともに,災害対策基本法によって指定公共機関に認定されています.災害時の対策に特別の役割を果たすことが法律によって期待されているわけです.
 商業放送局にとどまらないNHKが,このような映像を流したという事実がもし確かめられたら,「良識を疑う」以上の考察の対象になるべきだと,私は思います.(1996.3.8.0943)
(2)危険地帯で撮影した映像のテレビ放送
 1996.3.7.0700前後に,JNNとNNNで駒ヶ岳山頂火口の地上映像が相ついでテレビ放送された.どちらも同じビデオテープを使ったもののようだった.フルフェイスのヘルメットをかぶった数人が映っていて,撮影者は五十嵐某とあった.
 この映像をみるかぎり,そのときのその場における生命の危険はきわめて大であったと思われる.1991.6.3直前の島原市北上木場の危険と同等だったといってよい.フルフェイスのヘルメットで生命を守ることができると彼らが思ったとしたら,それは大まちがいだ.彼らが無事に生還できたのは,単に幸運だったからにすぎない.
 このようなビデオ映像を放映することによって伝えることができる情報の価値と,それが放映されることによって発生するかもしれない悪影響を考えると,放映したテレビ局の良識を私は疑う.(1996.3.7.1030)
 その後入手した情報によると,この映像は,これより先にANNで3.6.2200に流れたそうである.(1996.3.8.0952)
(1)森町職員が危険地帯に接近
 3.7朝日新聞朝刊社会面に,「六日昼に火口を間近に見た森町職員によると,」という一節がある.もしこれが地上から接近して観察したのであれば,危険この上ない.地元行政の職員がこのような行動をなぜとるのか私は理解できない.(1996.3.7.1030)
NHK:日本放送協会
NNN:日本テレビ系列
JNN:東京放送(TBS)系列
FNN:フジテレビ系列
ANN:テレビ朝日系列

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