伊豆大島

伊豆大島では,マグニチュードが4.0を超える噴火が最近1400年間に12回(Y1〜Y6,N1〜N4,S1〜S2)起こって,海岸ふきんの平坦面上に堆積物をのこした(中村,1963).この観察を2万3000年前までさかのぼっておこなうと,さらに95回の大噴火(O1〜O95)を確認することができる(田沢,1980).しかしこの間,同じような噴火を伊豆大島が規則正しく繰り返していたと考えるのは正しくない.たとえば,1)N1〜N4の降下テフラにはスコリアが多いが,Y1〜Y6の降下テフラには火山砂が多い.2)O81〜O86に厚いカタが認められる.3)O93とO95の降下スコリアがとても厚いというように,特定の時代に特徴を同じくする噴火が連続して起こっている.また,O55ふきんのレスが厚いことから,1万年前ころの噴火間隔が比較的長かったこともわかる.

過去2万3000年間の伊豆大島の噴火史のなかで最も注目すべき事件は,7世紀に数十年の間隔をおいて起こった二回の水蒸気マグマ噴火(S2とS1)である.S2のときに発生した岩なだれは全島を覆っている.この結果として,4.5 km × 3 km のまゆ形をしたカルデラが島の中央部につくられた.S2岩なだれに類似した岩なだれは8000年前のO41噴火でも発生したが,ずっと小規模だったらしい.

O55(1万年前)を覆うレスとO73(1万7000年前)を覆うレスの中には,流紋岩火山灰の薄層が挟まれている.前者には直径2mmの軽石も見つかるから,伊豆地域の他の火山の爆発的噴火によって飛来したものにちがいない.式根島が最有力候補である.

伊豆大島では,M4を超えた1684年噴火(M4.3)や1777年噴火(M4.5)でも死者は出ていない.それ以前の大噴火による被害は古記録に詳しい記載がない.1957年10月13日の爆発(M1)で,火口ふきんにいた観光客が1人死亡し,53人が負傷した.


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