噴煙から降下するテフラ
Tephra Fallout from Eruption Clouds
 
 浅海や湖底あるいは地下水の豊富な地域で噴火が起こると,水蒸気マグマ爆発がしばしば起こる.水蒸気マグマ爆発の破壊力はすさまじい.マグマの熱によって多量の水が急激に気化するからである.

 高い噴煙柱から広範囲にテフラを降らせるものを水蒸気プリニー式,低い噴煙柱から限られた範囲にだけテフラを降らせるものをスルツェイ式とよんで区別する.
 直径11kmの十和田湖は,1万5000年前の噴火(M6.7)でいまのかたちになった.写真の八戸火山灰とそれを直接覆う火砕流堆積物がそのときの堆積物である.八戸火山灰は水蒸気プリニー式降下堆積物の典型例である.

 八戸火山灰は火山灰層と軽石層の互層からなる.火山灰層は,ぎっしりと詰まった火山豆石からなっている.火山灰粒子は単独で空中降下したのではなく,集合することによって大きな終端速度を獲得して地表に落下した.
(八戸市剣吉山)
 軽石層の中にも火山豆石が混じっている(そのいくつかを赤い矢印で示す).プリニー式軽石の場合は,大きな軽石の内部は高温酸化によってふつう赤変しているが,水蒸気プリニー式の場合は外来水によって効果的に冷却されるため,大きい軽石の内部も白い.
 水蒸気プリニー式火山灰はシルトガラスを主成分とするから,遠来の大規模火砕流サーマル火山灰とやや似ている.しかし火口から50km以内の水蒸気プリニー式火山灰はかならず軽石礫と岩片礫を含むから,両者は確実に見分けることができる.
(八戸市剣吉山)

   

 地表面をとった写真である.表面に乾裂が見えている.最近の降雨によってマトリクスが洗い流されて火山豆石が浮き出しているので,観察しやすい.

 1790年にキラウエア・カルデラ内でスルツェイ式の水蒸気マグマ爆発が起こった.サージが発生し,それと同時に火山灰が降った.その中に含まれていた火山豆石がこれである.マトリクス部分の火山灰は泥雨として地表に降下した.カメハメハ軍の戦士の足跡化石が見られることでもこの地層は有名である.(Footprint, SW riftzone of Kilauea, Hawaii; 1790 ash from Kilauea)

 十和田湖の中湖は,5400年前の噴火の末期に外湖の水が火口内に激しく流入してできた.このとき激しい水蒸気マグマ爆発が起こって,火山豆石をたくさん含む宇樽部火山灰が堆積した.
(鹿角市熊取平)