噴煙から降下するテフラ
Tephra Fallout from Eruption Clouds
 
 一回のブルカノ式爆発のマグニチュードはふつうM1.0以下であるが,ブルカノ式爆発は数十年あるいは数百年に渡って数千回繰り返されることが多く,全体としてみると,マグニチュードがM4.0あるいはそれ以上になることがまれでない.そのような多数回のブルカノ式爆発によって放出された火山砂は,地層中に保存される.その地層の等層厚線は,風向きが季節によって変化したことを反映して,ほぼ同心円状に火口を取り巻く.

 ブルカノ式爆発を頻繁に繰り返す火口の周囲3km以内の地表には,火口から投出されて弾道軌道を描いて着地した岩塊が散在している.
 爆発音を伴って火口から突然上昇するブルカノ式サーマル.
(左:桜島1981年9月7日14時30分)
 
 森林に降り注いだ火山砂は,しばらく樹木の表面に付着してそこにとどまる.その後,雨で洗い流されたり風で吹き払われて地表に落下した火山砂は,下草や落ち葉に庇護されて地層となる準備にはいる.
(右上:鹿児島県桜島)

 一方,裸地では地表の上に火山砂が直接堆積する.しかしそれはまもなく風や雨水で運び去られてしまい,その場所で地層となることはない.
(右下:鹿児島市1985年8月)
 

 最下部に見えるのは1914年のプリニー式噴火で堆積した大正軽石.その上に,薄い褐色レスを挟んで,1955年10月13日から現在まで継続しているブルカノ式噴火の堆積物が重なる.噴火頻度が時間変化したため成層構造がつくられている.この性質を逆に使って,堆積相の特徴から堆積速度を見積もる方法が最近開発された(井村,1995).その方法を過去の火山砂層に適用すると,地質時代のブルカノ式噴火の継続時間を知ることができる.
(桜島南岳火口の北北東3.3kmで1990年5月12日撮影)

 トカラ列島にある諏訪瀬島の御岳火口丘は,17世紀以降ほとんど休むことなく続いているブルカノ式噴火でつくられた.

 1815年のスコリア層が最下部に見えている.その上に,レスを挟まないで,ブルカノ式火山砂が重なる.火山砂にみられる黄・青・赤などの色の違いは火口内の環境が変化したことを意味している.赤い火山砂は1884年の溶岩流出のときに放出されたらしい.
(鹿児島県諏訪瀬島で1990年5月10日撮影)

 阿蘇山では,爆発音を伴わないで噴煙柱が連続的に立ちあがることがよくある.この噴煙柱からもブルカノ式とよく似た火山砂が降る.この様式の噴火を小野ほか(1995)は灰噴火と呼んだ.灰噴火の堆積物には投出岩塊が伴わない.
(1989年11月4日撮影)


 爆発音を伴わない灰噴火は桜島でも起こっている.降灰の大半はブルカノ式爆発でなく灰噴火でもたらされているらしい.