火砕流と熱雲の堆積物
Ignimbrites and Nuee Ardente Deposits
 
 火砕流の中には,入戸火砕流(M8.0)のようにすべてのマグマが一気に流出したものもあれば,何回にも分けて流れたものもある.一回の流出で一枚の堆積物がつくられるから,流出回数に応じた枚数の堆積物がつくられる.小規模な噴火ほど枚数が多くなる傾向がある.
 中央やや下に,ほとんど砂と礫ばかりからなる堆積物があり,当時の地表にあった窪みを埋めている.その中には炭化木(矢印)が含まれているので,この火砕流の流下によって森林が焼き払われたことがわかる.その上に5枚の軽石質堆積物が前置層をつくって次々と重なっている.流れの方向は左から右である.軽石礫は一枚の地層の中で上部に濃集している.流れの中を軽石が浮上した.
(北海道森町の押出沢;駒ヶ岳の1929年火砕流堆積物)
 火砕流中の軽石は,流走中に互いにこすれあって多かれ少なかれ丸くなる.堆積後に高温ガスが周囲を通過すると,この写真のように表面が酸化して赤変する.
(北海道森町の押出沢;駒ヶ岳の1929年火砕流堆積物)
類似の堆積物:降下軽石
区別の方法:降下軽石は角張っていて,大きな軽石礫の中心部を除けば,急冷されるため白い.
 降下軽石の上に二枚のフローユニットからなる火砕流堆積物がのっている.それぞれのフローユニットの上部に軽石が濃集している.崖の高さは15m.
(日光市白崖,男体山の1万4900年前の火砕流堆積物)
 12万年前の屈斜路4火砕流堆積物(M7.1)は上下二枚のフローユニットからなる.下位のフローユニットは明色の軽石流だが,上位のフローユニットは暗色のスコリア流である.下位のフローユニットに多数みられる脱ガスパイプは上位のフローユニットに切断されている.しかし,両者の間に長時間が経過したことを示す堆積物(たとえばレス)は挟まれていない.
(北海道)