5.22(月)

▼あの〜,いまさらなんですが,「噴火」ということばについて解説します.
 用語集のページで,私は,噴火を「火口から火山灰や溶岩などが激しくほとばしり出る現象」と定義しています.2000年3月31日に有珠山が噴火したと述べることに反対の人は,おそらくいないと思います.じゃあ,いま現在,有珠山は噴火中ですか?それとも噴火を休んでいますか?きのうの時事通信の記事を読むと,すくなくとも時事通信社は,いま現在有珠山は噴火していないとみているようです.記事の引用が正確なら,岡田先生もそう考えていることになります.1.5メートルの隆起と地熱地帯の拡大が噴火の前兆であるかどうか議論しているのですから,いまは噴火していないと暗黙のうちに了承している.
 いま有珠山は噴火していないとする見方は,大多数の国民にとって驚きを与えるのではないでしょうか.
 もうひとつ噴火にまつわる話題.3月31日から始まった噴火を何年ぶりと記述するかで,報道各社を三通りに分類できます.22年ぶり(NHK),22年7カ月ぶり(北海道新聞朝日新聞),23年ぶり(読売新聞毎日新聞).こんな基本的なことに,なぜ不一致がみられるのでしょうか?
 前回の噴火は1977年8月7日に始まりました.この噴火開始年月から数えれば,2000年3月は22年7ヶ月ぶりになります.年だけ取り出して数えれば23年ぶりになります.22年7ヶ月と23年は,年で数えるか月で数えるかの流儀によって生じたもので,ここに意見の衝突はありません.
 ではなぜ,NHKひとりが22年ぶりと言っているのでしょうか?22年7ヶ月は四捨五入しても22年になりません.じつは前回の噴火は,1978年10月まで続きました.NHKはおそらく,この噴火終了から数えて22年目に噴火した事実に着目して22年ぶりと言っているのでしょう.
 噴火は,消長しつつ何カ月も何年も継続することがふつうです.その期間中に強い爆発や大量のマグマを出す爆発が発生すると,それがとくに注目されて,その爆発に(たぶん日付や地名を付記した)名前がつくと理解してほしい.これは火山専門家からのお願いです.
 このように,噴火をひとつ二つと数えようとすると,けっこうむずかしい問題に突き当たります.でも,このむずかしさが火山学界で共通認識になっているとはまだいえません.このあたりにも,克服されるべき課題があります.