2000.3.31噴火メモ
- 1308 噴火開始
- 1320 一回目のピーク
- 1333 二回目のピーク.気象庁発表によると,このときの高さ2700メートル.
- 1344 三回目の(小さな)ピーク
- 1351 噴煙の色が黒さを増すとともに,岩塊が盛んに投げ出され始めた.ちょうどこのころ撮影された写真(北海道新聞へのリンク)
- 1400 四回目のピーク(今回のクライマックス)約30分間続いた.気象庁発表によると,高さ3200メートル.
- 1440 岩塊の投げ出しに始まる五回目のピーク(あやしい)
- 1455 実質的に終息.
- 1700 典型的な鶏尾状ジェットcock's
tail jetsが数分間
- 噴火の特徴は,
- 噴火は大きな音や地震をともなうことなく,比較的静かに始まった.
- クライマックスへのぼりつめるとき,多数の岩塊が投げ出されたが,鶏尾状ジェットはほとんどみえなかった.
- 30分間のクライマックスの噴煙は,真っ黒でモクモク.
- バンバンという破裂音がほとんどなかった.
- 噴火は消長を伴ったが,およそ1時間45分継続した.
- 噴煙の最大高度は3200メートル
- 残された火口は,あまり大きくなかった.
- 1430ころに見られたミニ火砕流(あるいはサージ)
- テレビ画像
考察
3.31噴火は,阿蘇山や桜島でしばしば発生する灰噴火とよく似ていた.灰噴火は,顕著な爆発音を伴わずにやや低い噴煙が立ち上がり,それが一定時間継続することが特徴である.3.31噴火は,やや不安定ではあったが,およそ1時間45分継続した.灰噴火のメカニズムはまだよく解明されていないが,小野晃司らの研究によると,地下でマグマガラス固化体が頭部表面からパリパリとはがれ壊れていくイメージでとらえると,その特徴の多くを説明できるという.
有珠での類例をあげるとすれば,前回の噴火のとき,1977.8.13.2237から始まってSB火山灰を出した噴火を指摘できる.
浅間山で20世紀に何回も発生した爆発やいま継続中の桜島でみられるある種の爆発は,カリフラワー状の噴煙柱が上昇することで3.31噴火と似るが,それらは大音響を伴い,刹那的であって,継続的に爆発し続けることをしない.浅間山や桜島でみられるそれらの爆発は,ふつう,ブルカノ式噴火と呼ばれる.ブルカノ式噴火で,火口の上に立つ噴煙柱は真夏の入道雲のようなサーマルであり,開始→成長→最高潮点→衰退のめまぐるしい一生をたどる.線香の煙のような定常状態が出現するプルームではない.
水蒸気爆発とは,その噴出物のなかにマグマの破片が含まれないものをいう.噴出物の過半は地下で熱水変質した火山粘土が占める.その典型例としては,草津白根山の1882年以降の数回の噴火がよく知られている.
3.31.1700ころの数分間に見られた鶏尾状ジェットは,水蒸気マグマ爆発に特徴的な噴火形態である.1時間45分続いた噴火が収まっていく過程で,火道底すなわちマグマガラス固化体の頭部に地下水が接触して生じたのだろう.
3.31噴火は灰噴火だったとする仮説は,噴出物の種類と形態を調べれば検証可能である.
早川由紀夫(4.1.0330)
- 地質調査所の東宮さんは「3/31に放出された火山灰の総量のおよそ半分」がマグマ物質だという.(4.13)
- 地質調査所が走査電子顕微鏡でみたら,構成物の大部分は新鮮な火山ガラス(4.8.1757)
- 地質調査所と北海道大学が,洞爺湖の湖面を漂流する軽石を発見した.軽石の写真と説明(4.3午後)
- 鶏尾状ジェットは,1910年の噴火でもよく見られた.大森房吉は,それをspear heads(槍の頭)と表現している(Omori,
1911).
- 1978年噴火のbase cloud
- 北海道大学岩石学火山学研究グループ による2000.3.31火山灰の顕微鏡写真で,1%の火山ガラス(4.1未明)
- 噴火様式の分類