2000.3.31噴火メモ


考察

3.31噴火は,阿蘇山や桜島でしばしば発生する灰噴火とよく似ていた.灰噴火は,顕著な爆発音を伴わずにやや低い噴煙が立ち上がり,それが一定時間継続することが特徴である.3.31噴火は,やや不安定ではあったが,およそ1時間45分継続した.灰噴火のメカニズムはまだよく解明されていないが,小野晃司らの研究によると,地下でマグマガラス固化体が頭部表面からパリパリとはがれ壊れていくイメージでとらえると,その特徴の多くを説明できるという.

有珠での類例をあげるとすれば,前回の噴火のとき,1977.8.13.2237から始まってSB火山灰を出した噴火を指摘できる.

浅間山で20世紀に何回も発生した爆発やいま継続中の桜島でみられるある種の爆発は,カリフラワー状の噴煙柱が上昇することで3.31噴火と似るが,それらは大音響を伴い,刹那的であって,継続的に爆発し続けることをしない.浅間山や桜島でみられるそれらの爆発は,ふつう,ブルカノ式噴火と呼ばれる.ブルカノ式噴火で,火口の上に立つ噴煙柱は真夏の入道雲のようなサーマルであり,開始→成長→最高潮点→衰退のめまぐるしい一生をたどる.線香の煙のような定常状態が出現するプルームではない.

水蒸気爆発とは,その噴出物のなかにマグマの破片が含まれないものをいう.噴出物の過半は地下で熱水変質した火山粘土が占める.その典型例としては,草津白根山の1882年以降の数回の噴火がよく知られている.

3.31.1700ころの数分間に見られた鶏尾状ジェットは,水蒸気マグマ爆発に特徴的な噴火形態である.1時間45分続いた噴火が収まっていく過程で,火道底すなわちマグマガラス固化体の頭部に地下水が接触して生じたのだろう.

3.31噴火は灰噴火だったとする仮説は,噴出物の種類と形態を調べれば検証可能である.

早川由紀夫(4.1.0330)