赤城火山の成り立ち
関東平野の北西端にある赤城山は,底径35km×22kmの裾野をもつ大円錐火山である.その長大な裾野は火山麓扇状地・岩なだれ堆積面・火砕流堆積面から構成されている.西麓の橘山岩なだれ堆積面と南麓の石山岩なだれ堆積面は20万年前ころに起こった中央部の大規模崩壊で生じた.前者に対応する崩壊地形は沼尾川と赤城白川を取り囲む馬蹄型凹地として現在も残っているが,後者に対応する崩壊地形はわかりにくい.石山岩なだれ堆積面の西隣には大胡火砕流堆積面が広がる.火山麓扇状地は北麓から西麓に広く展開している.19万年前におそらく鈴ヶ岳から流出した火砕流の堆積物は,子持山との間の谷を棚下で厚く埋めて溶結し,利根川の流れをせき止めて沼田湖をつくった.赤城白川の扇状地は新しく,わずか2万年前に形成された.東方への裾野の展開は足尾山地に阻まれている.
39万年前の真岡もうか軽石(M5.7)が赤城山から噴出したもっとも古いテフラである.この前後に現在の最高峰である黒檜くろび山(1828m)を上回る高い火山体がつくられたと思われる.そのあと山体崩壊と火山麓扇状地の形成があって,15万年前からプリニー式軽石噴火が頻繁に起こるようになった.7万5000年前の大胡火砕流の噴火(M5)は水沼4軽石の直後に起こり,噴出源には荒山から鍋割山に至る溶岩ドーム列が残された.橘山岩なだれを供給した馬蹄型凹地内にある複数の溶岩ドームはこのころ形成されたらしい.出現したばかりのドームから発生した熱雲が残した薄い堆積物を津久田原で複数枚みることができる.4万5000年前には,湯ノ口軽石(M5.4)が噴出し,その直後にガラン火砕流が南へ流れ下った.大沼おの・小沼このをいだく4.2km×2.7kmの山頂火口は,このときつくられたらしい.そのあと,3万2000年前に鹿沼軽石(M5.7)が山頂火口内の北よりから噴出し,火口南部での小沼タフリングの形成,火口中央での地蔵岳溶岩ドームの上昇がそれに続いた.
赤城山の斜面では,つよい地震動によって急傾斜地が崩壊して岩なだれが発生したことがこれまでに何回もあったようだ.818年7月の地震で発生したことが確かな岩なだれ堆積物が,南面の新里村を中心にして広範囲にみられる.同様の岩なだれが,1万5000年前に赤城村中原で,3万年前に新里村西窪で発生したことがわかっている.
年代(ka) | テフラ | 規模 | 層位 | 備考 | |||||
1.182 | 赤城新里地すべり | 818.7 | |||||||
15 | 赤城中原地すべり | 白糸の上65cm | 赤城村津久田54 | ||||||
30 | 赤城西窪岩なだれ | BP//鹿沼 | 新里村西窪71 | ||||||
32 | 赤城鹿沼 | 5.7 | 八崎の上70cm | 黒保根村水沼1;新井(1962) | |||||
45 | 赤城湯ノ口 | 5.4 | 行川1の上18cm | 黒保根村水沼1,ガラン石質火砕流(黒保根村 宿廻 城149) | |||||
47 | 赤城行川1 | 5.1 | 行川2の上10cm | 黒保根村水沼1;鈴木(1990) | |||||
48 | 赤城行川2 | 5.3 | 倉吉の上10cm | 鈴木(1990) | |||||
57.9 | 赤城水沼1 | 5.3 | 行川2の下54cm | 黒保根村水沼1;鈴木(1990),56FT,59FT(鈴木正男1976) | |||||
58 | 赤城水沼2 | 4.9 | 水沼1の下32cm | 黒保根村水沼1;鈴木(1990) | |||||
59 | 赤城水沼3 | 3.8 | 水沼2の下12cm,水沼4の上87cm | 黒保根村水沼1;鈴木(1990) | |||||
70 | 赤城追貝 | 5.4 | 水沼3//4(鈴木) | 火砕流あり | |||||
74 | 赤城長井2火砕流 | 4 | 八崎の下300cm | 赤城村長井小川田57 | |||||
75 | 赤城水沼4 | 5 | 嶺の下70cm,葛原の上110cm | 宮城村二本木3,鍋割山/大胡火砕流; 鈴木(1990)(嶺の下30cm,嶺小学校下67) | |||||
80 | 赤城長井1火砕流 | 4 | 長井2の下30cm,御岳1の上110cm | 赤城村長井小川田57 | |||||
100 | 赤城水沼6 | 5.3 | 御岳1の下5cm,水沼4の下150cm | 今市市明神130,高泉巨大露頭148;鈴木(1990) | |||||
111 | 赤城水沼7 | 4 | 荻久保の直下 | 鈴木1993地学雑誌73-90 | |||||
120 | 赤城水沼8a | 4 | 水沼7の下30cm | 鈴木1993地学雑誌73-90 | |||||
130 | 赤城水沼9/10 | 5.1 | 水沼8aの下35cm,クラック帯直上 | 鈴木1993地学雑誌73-90,宇都宮市上欠国道104 | |||||
140 | 赤城大間々火砕流 | 5 | 水沼6の下160cm | 新里村高泉巨大露頭148 | |||||
150 | 赤城石山岩なだれ | 大間々の下50cm | 新里村高泉巨大露頭148,梨木"泥流" | ||||||
150 | 赤城富士見 | 5 | 御岳1の下220cm | 赤城村勝保沢5 | |||||
190 | 赤城津久田火砕流 | 5 | 富士見の下200cm | 赤城村勝保沢5,棚下溶結凝灰岩も同じか | |||||
200 | 赤城橘山岩なだれ | 八崎の下,空沢の上? | |||||||
390 | 赤城真岡 | 5.7 | APmUの下170cm | 宇都宮市上欠町103, 氏家町早乙女106; 鈴木(1993) | |||||
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