赤岩はどのようにして形成されたのか
流動性を持ったマグマが,火山の爆発によって放出されたものを,火山弾とよびます.
とくに流動性に富んだマグマは火口付近に積み重なり,火口の縁を形成していきます.これらひとつひとつをスパターといい,これらが堆積してできた岩石はアグルチネートとよばれます.
前橋などでみられる赤岩を観察すると,軟らかい餅が積み重なったような構造をしているのがわかります.これは,赤岩がアグルチネートであることを示しています.赤岩が赤い色をしているのは,火口付近に高温状態で堆積したことにより,酸化されたからです.
つまり赤岩は,火山の火口付近で形成され,何らかの作用によって現在の位置まで移動してきたということになります.
赤岩を運んだ要因〜前橋泥流
前橋市岩神町の飛石稲荷神社には大きな赤岩がまつられています.神社の名前から察するとおり,火山の火口からこの場所まで赤岩が飛んできたという伝説もありますが,このようなことは実際には考えられません.では,赤岩はどのようにして前橋までもたらされたのでしょう.
赤岩は前橋泥流堆積物とよばれる堆積物中にみつかっています.
前橋泥流というのは,いまからおよそ2万3000年前の浅間山でおこった山体崩壊(塚原岩なだれ)によってひきおこされた泥流のことです.この泥流は吾妻川,そして利根川を流れ下り,広い範囲に堆積物を残しています.このため堆積物のみつかった地点ごとに異なる名称でよばれることがありますが,ここでは一括して前橋泥流とよぶことにします.
つまり赤岩は,前橋泥流によって上流から下流へと押し流されて,現在の位置まで運ばれてきたということができます.
赤岩の起源
前橋市岩神町の飛石稲荷神社にまつられている赤岩や,敷島公園内にあるお艶が岩など前橋市内で見られる赤岩については,赤城火山がその供給源であるとされてきました.赤城山の山体崩壊によって坂東橋上流に堆積した流れ山の中に,赤岩と同質と見られる岩塊が含まれていることから,これが前橋泥流によって二次的に押し流されて前橋付近にもたらされたという考え方です.
しかし,利根川との合流点よりもずっと上流の吾妻川流域や,浅間山の南麓に位置する長野県佐久市の塚原岩なだれの堆積範囲にも赤岩が分布していることなどから,赤岩の起源は浅間山であるとした方が自然であると思われます.