噴煙から降下するテフラ
Tephra Fallout from Eruption Clouds
 
 火口からあふれだして地表に広がった火砕流は,広い熱源となって,巨大なサーマル火山灰雲を立ち上げる.これは大規模な軽石質火砕流から小規模な熱雲に至るまで,共通してみられる現象である.サーマル雲から降下した火山灰は,火砕流や熱雲の堆積物を直接覆い,細粒で,薄く,赤みを帯びているという特徴を普遍的にもっている.それはしばしば第三層(layer 3)とよばれる.大規模な火砕流(M>7.0)にともなう第三層のなかには,日本列島全体をおおうくらい広域に分布するものもある.
 雲仙岳の1991年熱雲に伴ったサーマル火山灰雲の移動.6月3日は延岡,6月8日は北九州一円,6月11日は松山,9月15日は高知で降灰が確認された.
 樽前山の1739年火砕流噴火(M4.5)では,火砕流が複数回流れ下った.二枚の火砕流堆積物の間には薄いサーマル火山灰層が挟まれている.この写真には,火山シルト/火山豆石/火山礫のセットが2〜3枚認められる.1セットの中では,終端落下速度のちがいでつくられた級化層理が明瞭である.この降下火山灰を堆積させたサーマル雲は,この地点に達しなかった火砕流から立ち昇ったものである.

 降下火山灰の層理面が水平なのは,下の火砕流堆積物の表面が水平だったことによる.降下火山灰最上部の上面がきわめて水平な青黒色火山砂は,局地的に発生した激しい降雨による表面流水の堆積物である.その直下のあずき色火山シルト層中の気泡は,このシルトが泥雨として降下したことの証拠である.

 下の火砕流堆積物から発生した火山ガスがこの火山灰層の下面で停留したために,軽石や火山灰の表面を赤褐色に変色させている.
(北海道支笏湖畔; The 1739 ash from Tarumai)