岩なだれ堆積物の断面をみると,色や粒子構成が異なるいくつかの領域を認識することができる.これをパッチワークという.ひとつ一つのパッチは元の山体の部分をつくっていた地層からなる.ときには降下軽石堆積物のような強度がほとんどゼロに等しいパッチもみつかる.岩なだれの内部に強い応力が働かないことのあかしである.
岩なだれ内部には相対速度がほとんど発生せず栓流(plug flow)として流れ下る.ガスの発生源がなく高温でもないから,上昇ガス流が発生して流動化現象が実現することはない.こうして,岩なだれの中では大きな降伏強度が保証されて巨大岩塊が遠くまで運ばれる.
|
|
|
|
|
|
2万4300年前に黒斑山が東へ大崩壊して発生した塚原岩なだれの断面.オレンジ・紫・黒などのパッチが明瞭である.多くのパッチは引き伸ばされている.
(長野県軽井沢町杉瓜;Tsukahara debris avalanche of Asama ) |
|
|
|
|
岩なだれは高速で流れるから,地表面近くの境界層でつよい剪断力が発生する.その結果,地表付近の植物や土壌が岩なだれに取り込まれ,岩なだれ中のブロックが磨耗してつくられて細粉と混じり合って,パッチとパッチの間を埋めるマトリクスになる.
(佐久市塚原; Tsukahara debris avalanche of Asama) |
|
|
|
|
|
|
|
伊豆大島のいたるところで見られるS2.0凝灰角礫岩は,1450年前の山体崩壊で発生した岩なだれの堆積物である.三原山をとりまく「カルデラ」はこのときにできた.
不明瞭ながらパッチが認識できる.直径30cmほどの樹幹(矢印)がいくつか見える.どれもほとんど炭化していないことからこの流れは低温だったことがわかる.
(伊豆大島の火山博物館駐車場)
|
|
|
|
|
|
|