堆積物から噴火をよみとる
Reconstructing Past Eruptions from the Deposits
 
 玄武岩火山は小さな噴火を短い間隔で繰り返すので,レスからテフラを見分けることがしばしばむずかしい.弱い噴火が多いので,地層の断面を観察するときには火口から10km以内の山腹を選ぶと噴火史を詳しく解読できる.
 御殿場口登山道の駐車場がある太郎坊は標高1402m,富士山頂の南東7.5kmに位置する.最上部に厚さ150cmの1707年スコリアがある.その下に1900年前の湯船第二スコリア(Yu-2),2600年前の砂沢スコリア(ZuS),3400年前の仙石スコリア(S10)がある.砂沢スコリアと仙石スコリアの間のレス中に,伊豆半島から3200年前に飛来したカワゴ平軽石がみつかる.
(富士山の太郎坊)
 この写真には,伊豆大島の噴火によって堆積したおよそ100枚の降下テフラが写っている.休止期に堆積したレスで上下を挟まれた一枚のテフラが一回の噴火に対応する.このテフラ/レス断面から,伊豆大島の最近2万3000年間の噴火史を読みとることができる.

 中程に顕著な不整合面が認められるが,これは長い時間間隙を表現していない.その時代この地点の地表が荒れて浸食作用が活発に起こったことを示している.
(伊豆大島の千波;Izu Oshima tephra section accumulated during the past 23,000 years)
 S2は,6世紀に発生した岩なだれの堆積物.この事件で山頂にカルデラが形成された.このとき伊豆大島の地下のマグマシステムに大きな変化があったらしく,以後の噴火の規模・頻度・様式が大きく変化した.
(伊豆大島の千波)
 近隣の流紋岩火山からまれに飛来する白いテフラが黒い色調の玄武岩テフラ/レス層の中できわだち,よい鍵層となる.これは,O73とO72のレスの間に挟まれる流紋岩火山灰.新島から飛来したものと思われる.
(伊豆大島の野増海岸)

 伊豆大島から噴出したテフラの量の経時変化を示した階段ダイアグラム