From: Masato Koyama <mkoyama@ed.shizuoka.ac.jp>
Date: Wed, 12 Apr 2000 10:04:58 +0900

Q1

3月31日の最初の黒煙モクモクを水蒸気爆発(あるいはマグマ水蒸気爆発)と言われ
るのは,たしかに違和感があります.しかし,その直後から今日まで続いている鶏尾
状ジェットと白煙が特徴の噴火は,これまでマグマ水蒸気爆発と呼ばれてきた他の噴
火と,少なくとも外見上はそっくりのように思います.

早川さんの4.9文章は,今日までのものすべてを灰噴火と読んでいるようにみえます
が,なぜそのようにお考えでしょうか?

A1

きのうまでの噴火を,水蒸気マグマ爆発phreatomagmatic explosionと呼ぶことに私は反対しません.

ただし,あれが水蒸気マグマ爆発の典型だったとは思いません.典型的な水蒸気マグマ爆発はもっとバンバン音をたてて爆発して,岩石を飛び散らせてほしい,というイメージが私にはあります.火口の大きさもあれでは不十分です.もっと大きくあってほしいと思います.

という意味から,用語集に次のように加筆しました.「爆発には大音響をともない,放出した岩石の体積に見合った大きな凹地を火口に残す.(4.2.1130 加筆)」

きのうまでの噴火は,下200〜400メートル分を隠せば,阿蘇や桜島の灰噴火と区別できなかったと思います.細かな灰が音もなくしずしずと降った.阿蘇と桜島で降るそのような灰は,ほとんどすべてマグマがいま冷却して生じたものだと考えられていると思います.

Q2

少なくとも映像を見た限りでは,これまでベースサージと呼ばれてきたものと外見上
は似ています.
早川さんがこれをサージと呼ばない理由は何ですか?
早川さんは,これまでサージと呼ばれてきた希薄な流れも含めて,火砕流と一括して
いるのでしょうか?

-------------------------------------------------------------------------
Masato Koyama, Department of Integrated Sciences and Technology
Faculty of Education, Shizuoka University
mkoyama@ed.shizuoka.ac.jp, http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~edmkoya/
-------------------------------------------------------------------------

A2

あれをサージと呼ばなかったのは,サージという専門用語を市民に覚えてもらう必要がないと思ったからです.市民が学習すべきカリキュラムを増やしたくないという思いです.20年くらい前の火山学界での「火砕流かサージか」の議論とは別です.その議論の土俵では,もちろんサージです.

軽石流・熱雲・サージをすべてひっくるめて火砕流ということにしたいなぁ,と最近思っています.今回は,その試しです.(この考えは,東海大学出版会の本を書いたときとは変わっています)

この考えで,用語集に「火砕流,熱雲,(火砕)サージ:これらは,防災面から言えばすべて同じだ.」と書きました.サージという項目をたてなかったのも,この考えからです.

雲仙のような溶岩ドーム上昇にともなって発生する流れは,火砕流ではなく熱雲と呼びたいと思っています.しかし,「火砕流」の浸透は著しいから,これはもうやり直しがきかないかもしれません.