火砕流と熱雲の堆積物
Ignimbrites and Nuee Ardente Deposits
 
 火砕流の頭部では,取り込まれた空気が熱せられて膨張するから,とくに激しい流動化が起こる.シルト粒子はガスとともに上方へすっかり運び去られてしまうので,砂と礫ばかりからなりシルト粒子をまったく含まない混合物がそこから沈積する.火砕流堆積物の最下層を構成するから,これをグラウンド層(ground layer)という.高速で走った火砕流によくみられる.グラウンド層を給源に向かって追跡すると,ラグ角礫岩にみかけ上連続する.
 厚さ20cmの黒い帯がグラウンド層である.岩片と結晶と少量の軽石からなる砂層で,まるで水洗いしたかのようにみえる.直前のプリニー式降下軽石の表面を削り込んで堆積し,火砕流本体である腹部からの堆積物に覆われている.グラウンド層と火砕流本体堆積物の境界はここにみられるように明瞭であることがふつうである.
(鹿児島県根占町;幸屋火砕流堆積物)

類似の堆積物:降下堆積物,洪水砂層
区別の方法:グラウンド層には岩片と軽石が混在しているので,よく分級されている洪水砂層から区別できる.グラウンド層の軽石は共存する岩片よりむしろ小さい.一方, 降下堆積物の場合は密度が小さい軽石の方が大きい.
 ハンマーの上12cmにある厚さ4cmの砂礫層がグラウンド層である.降下テフラと火砕流堆積物本体に挟まれている.グラウンド層の層厚は局地的に変化する.尾根の背後でしばしば厚くなる.
(八戸市剣吉山)
 阿蘇4火砕流のグラウンド層が,地表にあったA軽石層を切り裂いて浸食しようとした.
(竹田市米納)

 高速火砕流の典型であるタウポ火砕流の堆積物断面には,この写真のような厚いグラウンド層がしばしばみられる.直前の降下テフラを覆い,火砕流堆積物本体に覆われている.
(Taupo, New Zealand)