溶岩ドームや溶岩流の先端から発生する高温高速の爆風を熱雲(nuee ardente)という．重力不安定による崩落などをきっかけとした急激な減圧爆発(explosive
decompression)によって生じる．固形噴出物は溶岩の破片や細粉からなり，ほとんど発泡していない点が火砕流と異なる．1902年5月8日早朝，西インド諸島マルチニーク島のプレー火山で2万8000人の生命を一瞬にして奪った爆発で初めて認識されたため，この爆風はプレー式熱雲と呼ばれる．
プレー式熱雲は地表をまっすぐに突き進んでその通過域を完全に破壊してしまう．プレー以後も，ムラピ1930年，ラミントン1951年，ヒボックヒボック1951年，雲仙岳1991年，マヨン1993年などで同様の惨事が繰り返されている．
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マルチニーク島のプレー火山
(Mt. Pelee, Martinique. photo by Harry Glicken) |
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| プレー式熱雲の同縮尺比較図 |
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| プレー式熱雲に共通する特徴は次のようにまとめられる． |
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突然真っ黒なサーマルが発生し，上方向だけでなく横方向にも高速で広がる．
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地形の起伏を無視してすべてをのみこんで樹木や建造物をなぎ倒す． |
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谷の中には崩落岩塊が厚く残されるが，台地や尾根の上には薄い（〜数十cm）砂礫層が残される．
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堆積物はほとんど発泡していない． |
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高温酸化をうけたピンク〜オレンジ色の降下シルト層が最上部を薄く（〜2cm）覆う．
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爆発後，噴火口には外生的に成長する溶岩ドームが現われる． |
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爆発は一回では終わらずに，数日から数ヶ月の間に数回発生する． |
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雲仙岳で1992年2月2日に発生した熱雲
（FNN画像1992.2.3.1130） |
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雲仙岳1991年噴火の初期には，つよい減圧爆発が起こって熱雲とは別に垂直に上昇する噴煙も見られた．
（5月27日1100の熱雲，NHK画像1991.5.27.1900）
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新潟焼山は歴史時代に3回プレー式熱雲を発生させた．この写真には1773年と1361年の堆積物が写っている．1773年の熱雲堆積物は多量の炭化木を含み，厚さ6cmの降下火山灰を直接覆っている．火山灰の降下に続いて熱雲が発生して森林が焼きつくされたのだ．887年の熱雲の破壊面積はこれら2回の熱雲のそれよりずっと広い．
（糸魚川市アマナ平）
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