火砕流と熱雲の堆積物
Ignimbrites and Nuee Ardente Deposits
 
 アメリカ合衆国ワシントン州のセントヘレンズ火山は1980年5月18日早朝,北側へ大きく崩れた.このとき山体内部に上昇してきていた潜在溶岩ドームが急激に減圧されて大爆発が起こった.その爆風は27kmまで到達し,700km2の森林を完全に破壊した.
 爆発源は写真の左側13kmにある.1980年の地表(木の根のある層位)の直上にある厚さ20cmの砂礫層がその熱雲の堆積物である.前置層理(foreset bedding)が形成されている.背景の倒木はすべて右へ倒れている.

 砂礫層の上には,熱雲がつくったサーマル雲から降下した褐色火山灰,その直後に火口に立ち上がったプリニー式噴煙柱からの降下軽石が順に重なっている.
(Clearwater Creek, Mount St. Helens, Washington)
 爆発源の北東6kmでは,一部が焦げた丸太を多数含む砂礫層が厚さ2mほど堆積している.
(Windy Ridge)
 コールドウオーター・ビジターセンターの脇のトレイルには,プラスチック加工された露頭断面のはぎとり標本が元の場所に設置されている.来訪者は断面を切ったばかりの状態をいつでも観察することができる.大きな礫は下に集積している.
(Coldwater Ridge Visitor Center,爆発源の北西12km)