サージがつくるマールとタフリング
Maars and Tuffrings Formed by Surges
 
 サージは,体積の大部分をガスが占める希薄な流れである.希薄な流れの中では火砕物ひとつ一つが単独の粒子として振舞う.その中では渦が発生して乱流状態が生まれやすい.渦速度より沈降速度が遅い粒子だけがサージの中に懸濁して運ばれる.温度が 100℃以下の場合は気体+固体+液体(水)の三相流となり,湿った固体粒子の間に粘着力が働くから火山シルトが凝縮してすみやかに堆積する.火砕流の中では有効に働く流動化現象は濃密な粒子群に特徴的な現象であるから,希薄なサージでは働かない.

 サージは短命であり,その堆積物は発生源の近傍(およそ3km以内)にしか分布しない.流れが希薄であることを反映して堆積層の一枚一枚は薄く,しばしばレンズ状に尖滅する.サージを発生させる爆発は何回も連続して起こることが多く,何層も積み重なった堆積物の表面には砂丘と同じ波状の地形がみられる.サージは,水蒸気マグマ爆発によってごくふつうに発生する.
 キラウエアカルデラ内で1790年に起こった水蒸気マグマ爆発のとき発生したサージの堆積物である.ケアナカコイ火山灰とよばれている.地表に衝突した岩塊がつくったクレーターの断面がいくつかみえる.ハンマーの頭の層準はガリー浸食面にあたる.(Keanakakoi crater, Kilauea, Hawaii)
 浅間山から1万5900年前に発生した平原火砕流は吾妻川の深い谷を埋めた.高温の火砕流堆積物からしばらく二次爆発が続いて何回もサージが発生した.斜層理をもつその堆積物の上を嬬恋軽石(YPk)が覆う.

類似の堆積物:砂丘の砂.
区別の方法:サージの堆積物には,砂だけでなくシルトや礫も含まれている.サージとサージの間に降下した火山灰層にしばしば火山豆石が含まれている.