2001年3月31日までを考察対象にして確率を計算しました.私個人の経験と思想に基づいて算出したものですから,別の研究者がやれば別の数字になります.科学を,再現可能かつ反証可能な知的営みと定義するとしたら,この確率算出は知的営みではあるが科学ではありません.社会に役立つことを目指していますから,これはむしろ工学だと言えましょう.
発生確率 | 被災地域(クリックすると私のリスク対応試案を読むことができます) |
被害人口 |
リスク |
||||
┏0.8 | 3月31日が最悪だった | 0.8 | 西山火口と金比羅山火口近傍の限られた地域 |
50 |
40 |
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┗0.2 | これから最悪がくる | ||||||
┣0.3 | 2km火砕流なし | 0.06 | 洞爺湖温泉の西半分 |
500 |
30 |
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┣0.5 | 2km火砕流 | 0.10 | 洞爺湖温泉,虻田IC |
5000 |
500 |
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┣0.176 | 4km火砕流 | 0.0352 | 虻田町役場,壮瞥温泉 |
10000 |
352 |
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┣0.02 | 10km火砕流 | 0.004 | 伊達市,虻田町,壮瞥町,洞爺村 |
40000 |
160 |
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┗0.004 | 50km火砕流 | 0.0008 | 室蘭市,登別市,喜茂別町,長万部町,八雲町,森町 |
200000 |
160 |
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┗0.05 | 岩なだれ+津波 | 0.01 | 洞爺湖温泉,洞爺村,内浦湾 |
10000 |
100 |
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┗0.9 | 2km泥流 | 0.18 | 洞爺湖温泉の一部,虻田町入江の一部 |
500 |
90 |
(2001年3月31日までを考察対象にしました)
▼上にあげた確率の数字は不変ではありません.事態の進行にともなって変化します.
▼リスク心理学者吉川肇子さんの著書を紹介している小山真人さんのページをかならず併読してください.
▼「被災地域」は,その地変によって,生物と構造物がほぼ完璧に破壊される地域です.
▼「被害人口」は,被災地域の(噴火前の)住民の数.概数です.よく調べれば,もっと精度よく決められますが,いまできません.
▼「リスク」=「被害人口」x「発生確率」
▼火山学者の方へ,あなたが考える確率数値を教えてくださいませんか.複数の専門家の見積もりをここで公開できたらどんなにすばらしいことだろうか.
▼「なぜその確率数値を与えたのですか?」の質問には答えません.「私が算出した確率数値は,もっと大きい(あるいは小さい).私はこう考えるけど,あなたはどうしてそう考えるのですか?」の質問は歓迎です.
▼ツリーの枝振りの修正案も歓迎します.
▼このページの内容に関して,報道を目的としたマスメディアの取材には,お答えできません.
参考:
岩手山の論理ツリー
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/bosai/98iwate/scenario/logic/tree.html
Eruption Hazard Assessments and Warnings
By Punongbayan,Newhall, et al.
http://pubs.usgs.gov/pinatubo/punong2/index.html
に書かれたピナツボ論理ツリー
http://pubs.usgs.gov/pinatubo/punong2/fig4.gif
エコノミストの景気見通し報道に習おう
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/opinion/econo/mist.html
有珠のみなさんと,それから,報道にたずさわる方々へは,群馬大学教育学部早川研究室が提供しています.