三宅島-神津島2000年ページ
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8.17(木)
山頂火口の空撮がほしい 先週金曜日8.11を最後に山頂火口の情報がほとんどありません.8.11までの変化がその後も続いているとすると,この6日間でさらに1億2000万トンの岩石が地下に隠れたはずです.しかしこれを確かめることができません.三宅島を守るためには,空からみた山頂火口の映像を頻繁に取得することが必要です.火口底が見えればそれに越したことがありませんが,火口縁の位置をとらえた映像でもたいへん価値があります.(1030)
8.16(水)
解明されるべき三宅島のなぞ
- 噴煙をあげる熱源がどこにあって,どんなしくみで爆発が起こっているのか.→毎日の噴煙
- 地下でどんなメカニズムが働いて山頂火口のゆっくり大量陥没が起こっているのか.→火口の変遷
- 東京都が災害対策本部を7.30.1600に解散したまま,何があっても再設置しようとしないのはなぜか.→7.07
三宅島シナリオへ,多数の火山学者からの意見提出を求めます.
坪田からみた8.16噴煙
- 宅配便で7.14火山灰と8.10火山灰が,佐藤輝子さん@神着から届きました.送ってくださって,ありがとうございます.
- みました.均質な灰色で,火山豆石と気泡を含んでいます.三宅島で3000年前に起こった八丁平噴火で降り積もった火山灰とそっくりだと思います.きのう述べたもっともありそうなシナリオがこれから実行される確率がさらに高まったと感じます.あるいは,それ以上のことが起こると思われます.3000年前の八丁平噴火でなにが起こったかは,津久井・鈴木論文(1998火山149-166)で知ることができます.海岸部の集落には,火山灰が「10〜100cm積もるでしょう」ときのう書いた部分を,「30〜300cm積もるでしょう」に変更します.
- 活動火山対策特別措置法をまだよく読んでいませんが,この法律で三宅島を救うことができるかどうか私は疑問を持ちはじめました.(1005)
8.15(火)
最近の火山観測情報を,まつさん@九州大学がスキャンして置いてくれています.→東京都の災害情報ウェブ;→気象庁が出す火山情報
一日の目でみて小規模な噴火でも,それが延々と何百日も続けば,結果的には大規模な噴火になります.ですから,目の前で進行中の噴火をみて,小規模な噴火だと言う人は愚かです.賢い人は,(時間微分の意味を込めて)弱い噴火といいます.(1405)→規模と強度
毎日の陥没量はまだ鈍化していません.7月中旬以降もう30日間も毎日1000万立方メートルでほぼ一定であることがわかりました.これは(三宅島の人にとって)悪いニュースです.(1350)
- 坪田のさだぞうさんちからみた8.15噴火
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- ほんとうは最悪のシナリオまできちんとここで解説したいのですが,私は時間と能力を欠いています.もっともありそうなシナリオならいますぐ言えます.
- 7.08から始まった山頂火口の陥没によって,きょうまでの38日間で10億トンの岩石が地下に隠れました.陥没は現在も進行しています.進行速度はこれから鈍化するでしょうが,最終的な陥没量はいまの2倍の20億トン程度になるだろうとみられます.
- このうち半分は地下で消費されるでしょう.しかし残りの半分は火道を再び上昇してきて,火山灰として山頂火口から大気中に放出されるだろうとみられます.現在までの降灰は,その0.4%を実行しました.
- 火山灰の放出は短くて半年,長ければ二〜三年続くだろうと思われます.海岸部の集落には,火山灰が10〜100cm積もるでしょう.これは,桜島の島民が過去45年間にわたって受けてきた降灰とほぼ同量です.それが1/10以下の時間で起こります.
- このシナリオは,7.16.0930に私がここで公開したもっともありそうなシナリオそのものです.さらにこのシナリオは,気象庁がこれまで何回も述べてきたコメントの範囲内に留まっていると考えられます.もちろんこのシナリオが外れて火山灰の放出がずっと少ないまま終息する可能性もあります.未来を確定的に予測することはできません.
- このシナリオが現実のものとなる場合,活動火山対策特別措置法によって三宅島を救う必要があります.(1010)
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- 終息方向とは言ってない? 気象庁が8.10に出したコメントに,「現在のところ今朝からの噴火活動は終息の方向にあると考えられますが」とあります.たしかに,8.10噴火が終息しそうだと言っているだけで,6月下旬から三宅島で始まった異常全体が終息方向にあるとは言っていません.気象庁は,この日に限らず,今回の三宅島異常が終息方向にあると言ったことは一度もないとのことです.
- 気象庁のこの主張が正しいとすると,8.10コメント発表とそのあとに続いた記者会見を受けてNHKと朝日新聞が,今回の噴火が終息へ向かっていると伝えたのは誤報だったことになります.
しかし,同じ日の読売新聞に,『ただ、噴火のピークが比較的短時間で終わったことなどから、「全体的な流れとしては、これまで通り終息へ向かっている」とし、山ろくで噴火する可能性はないとの見方を改めて示した。』と書いた段落があります.会見後半の質疑応答で誰かがこのように答えた事実があったのではないかと疑われます.
- 毎日新聞は,その日の噴火が終息に向かっていると,8.10コメントを正確に伝えました.ただし別の記事で,『「井田会長は山腹での噴火の可能性を否定し、「今回も(マグマが降下し、一連の活動が終息に向かう中での)後始末のような噴火と理解している」と話した。
』と伝えました.( )でくくられた中の発言を井田会長が本当にしたのか,それとも( )でくくったことからわかるように,これは記者による勝手な思いこみだったのでしょうか.
- すくなくとも,気象庁の意思がマスメディアに正確に伝わっていないことは確かなようです.両者の間に重大な誤解が存在します.この齟齬によって損失を受けるのはもちろん,情報の受け手である三宅島の人たちです.(0845)
8.14(月)
- 坪田のさだぞうさんちからみた8.14噴火
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- 坪田のさだぞうさんちからみた8.10噴火
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- 気象庁が出す火山情報には四つの種類があります.常時観測対象火山について火山活動の状況を定期的に発表する定期火山情報をのぞいた三つが,火山の状況に応じて出される情報です.警報や注意報の役割をします.それらは,
- 緊急火山情報:生命・身体にかかわる火山活動が発生した場合に発表します.
- 臨時火山情報:火山活動に異常が発生し,注意が必要なときに随時発表します.
- 火山観測情報:緊急火山情報・臨時火山情報を補うなど,火山活動の状況をきめ細かく発表します.
- です.
- 今回の三宅島の異常では,異常発生直後の6.26.1933に,「三宅島での地震は引き続き発生しています。 噴火の恐れがありますので厳重に警戒して下さい。」と短く伝える緊急火山情報1号が出されました.生命・身体にかかわる危険が迫ったと気象庁が判断したということです.
- 臨時火山情報は,緊急火山情報1号の3分前に出された1号を含め,現在まで13号出されています.7.08噴火で9号と10号が,7.14噴火で12号が出されました.13号は8.10噴火の開始後4時間たってから出されました.8.13噴火と8.14噴火では臨時火山情報の発表が見送られました.直前の臨時火山情報13号を補う火山観測情報の発表に留まったようです.火山観測情報はウェブで公開されていませんから,(私を含む)ふつうのひとは見ることができません.その内容は,マスコミを通じて伝えられるものしか私たちは知ることができません.
- 8.13噴火と8.14噴火で臨時火山情報が出なかったということは,この程度の降灰は新しい段階の到来を告げる異常ではない,従前を超える注意が必要だとは考えないと,国の唯一の火山監視機関である気象庁がみていることを示しています.論理的には整っているし,有珠山などの前例を見ると納得できますが,この気象庁の対応処置は,いまの三宅島の人たちの情まですくい取って,彼らの支持を得ることができるだろうか.(1620/1645)
8.13(日)
- JNNが今朝放送した地震速報の回数グラフは,いまの伊豆諸島の異常を端的に示していて,たいへんわかりやすい.縦軸は,震度3以上の揺れが観測された回数に等しいそうです.8.03の79回って,一時間あたり平均3回です.18分おき.アラームとしての役割をもはや果たせない頻度です.(1650)
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- 山頂火口縁の後退を監視しよう(1400)
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- テレビ各局の気象情報解説者へのおねがい:
- 大雨による泥流・土石流の危険が増すのは,地震によって地盤が緩んでいる地域のほかに,降灰によって地表が覆われた地域があります.地表を火山灰がおおうと,降水が地下にしみこみにくくなって表面流水が生じて,泥流・土石流が発生しやすくなります.すくなくとも今日は,降灰地域の心配を言い忘れないでほしい.
- 降灰地域の泥流・土石流の危険は,降り積もった灰がすべて除去されるかあるいは地表がすっかり緑でおおわれるまで続きます.(1205)
8.12(土)
2000.8.11の三宅島山頂火口
- 噴火は脇役,陥没が主役 げしさんが紹介してくださった嶋野さんのサイトにある8.10火山灰の等層厚線図をみて,私の方法で迅速計測すると,降灰量は30万トンになります.
- 層厚線がかこむ面積を紙切りで重さをはかったわけではなく,モニタ画面で,面積をみつもっただけです.海に降った火山灰は含むが,山頂火口内に落ちた火山灰は含んでいません.
- これまでの三回の噴火の降灰量は,
7.08 10万トン
7.14 300万トン
8.10 30万トン
となります.
8.10は,7.14-7.15のおよそ1/10です.(7.08は,山頂近くのあたらしい測定点が増えて,これまでのみつもり2万トンより十分大きかったことが確認されたので修正しました.)
- 三回の噴火を合わせても340万トンです.これは,山頂火口の現在の陥没量9億トンのわずか0.4%です.量の比較からも,噴火は脇役であり,陥没が主役であることがわかります.陥没の過程で「たまたま」噴火したにすぎません.(ちばさん掲示板への書き込み,1455)
8.11(金)
- 東京都は「被災地域の早期復旧・復興に向けて、全庁的な連絡調整を推進するため」対策会議を8.08に設置した.災害対策基本法にもとづく災害対策本部は,どうしてもつくりたくないらしい.ひどい災害がまだこれからまだやってくる可能性が高いのに,復旧・復興をお題目に掲げて,とにかく幕を引きたいようだ.この行政対応は,きわめておかしい.これから先,伊豆諸島で大きな災害が発生した場合,行政責任がつよく問われよう.(0850)
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- 8.10噴煙の特徴 きのうの噴煙の高さは,測候所の迅速発表3000メートルが広まっていますが,各種映像をみると,6kmあるいはそれ以上だと思います.きちんとした計測がなされることを期待します.新島からみた噴煙(Kumiさん);空から(毎日新聞1012,NHK0900キャプチャー画像右).NHK0900画像がもっとも高いようにみえます.三宅島の直径8kmとほぼ同じ高さまで噴煙が上昇したようです.
- 噴煙は初め,上空の南西風に流されて北東に向かいましたが,下降する火山灰はしだいに下層の東風の影響を受けて西へ流されたように,気象レーダー(TAKOさんサイト)からみえます.当時の高度別風向きでこの解釈を検証する必要があります.ひまわりがとらえた噴煙09時,10時(かっとしさん).
- きのうの噴火は真っ青な夏空の下で起こりました.上昇する噴煙きのこ雲は入道雲と同じですから,局所的な大雨を降らせました.私はこれを噴火雨と言います.噴火雨は,噴煙を上昇させる火山の噴火でごくふつうに観測されます.(0820/0812.1120)
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- サージ NNN8.11.0710,NHK8.10.1902が放送したきのうの噴火の映像をみると,火砕流の一種であるサージが山頂火口から発生したと言ってよいと思います.噴煙柱の基部に首輪のような雲が広がっている.ただしこのサージは火口縁からわずか500メートルくらい前進しただけで止まった.
- このサージの温度はたいして高温ではなく,おそらく40度くらいでしょう(ただし,今後のサージがこのようなぬるい温度に留まる保証はないですから,不用意に火口縁に立つとサージに焼かれて死ぬかもしれません).このような噴火形態にとどまるかぎり,海岸沿いの集落までサージが達する恐れはほとんどありません.
- サージは流紋岩・デイサイトのような白いマグマだけでなく,三宅島の玄武岩のような黒いマグマでもふつうに発生します.水蒸気爆発でもふつうに発生します.三宅島の山頂噴火でサージが発生して,火山学的にまったくおかしくありません.(0730)
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- 東京都の災害情報ウェブに火山活動というページがありますが,6月29日の「噴火の可能性はほとんどなくなった」という火山情報がおいてあるだけで,あとは
tenki.or.jpをみろと,そっけない.そこには緊急火山情報と臨時火山情報がおいてあるだけで,火山観測情報はおいてありません.火山観測情報は,いまウェブでどこを捜してもみることができません.何のための火山観測情報?誰のための火山観測情報?
- 有珠山のときは,北海道立地質研究所や日本気象協会北海道支部などが火山観測情報まできめこまかくウェブで伝えたのに,世界都市東京のお膝元で起こっている三宅島の噴火でこのような後退は残念です.(0730)
8.10(木)
- 規模と強度 前回より規模が大きいという発言は,臨時火山情報13にみられる「7月14〜15日の噴火に比べて、やや規模が大きいと考えられます。
」からきているのですね.規模は噴出量をいうのがいい.噴火が始まったばかりで,噴出量がまだわからないとき,噴煙の高さがこれまでになく高かったときは,「強い」という語をつかうのがよい.噴火の大きさは,「規模」と「強度」でかなりうまく表現できます.現時点で,きょうの噴火は前回とくらべて,小規模だが強い噴火だと特徴づけできます.(1855)
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- 1カ月ぶりの噴火 2泊3日で夏休みをいただいてました.帰ってきたら,きのう夕方の雷雨で,群馬大学教育学部がネットワークから落ちたそうです.いま復帰しました.
- けさからの噴火は,たしかに噴煙の高さがいままで一番のようですが,火口から放出された火山灰の量は二回目の噴火7.14-7.15よりまだ少ないだろうと思います.もちろん,今晩これからさらに噴火する可能性は大きいので,これからその量をしのぐかもしれない.
- NNN1735の空撮では,火口底に開いた火孔のまわりに同心円上の低い砕屑丘ができていた.
- 7.14-7.15の危険の再来だと思います.始末の悪いカタをつくる水蒸気爆発.それ以上の危険はいまみえません.(1800/1855)