空気が澄んでいれば,ここから浅間火山の全貌を見ることができる.左から順に,黒斑山・前掛山・釜山・仏岩・小浅間・離山である.樹木に覆われた中景の尾根は,新第三紀の火砕流堆積物と堆積岩からなっている.手前のトウモロコシ畑の平坦地形は,塚原岩なだれのせき止めによって生じた湖がつくった地形である.
黒斑山は,もとは円錐形の大火山体だったが,22.9kaの大崩壊によって東半分を失い,馬蹄型凹地が残された.このとき発生した岩なだれは白糸の滝ふきんで南北二方向に分れて流れ下った.私たちはいまその堆積物の南の縁に立っている.
前掛山は 400 m × 400 m の火口を頂上にもち,現在も成長中である.山頂火口を囲む小丘は釜山と呼ばれる.その外側にある前掛山の両肩は,1108年噴火の火口の大きさ (1300 m × 1000 m) を示している.
前掛山に大半を覆われているので明瞭な地形が認められない仏岩は,22kaから15kaまでのあいだにつくられた厚さ400mの溶岩丘である.
小浅間山は山頂火口の東4kmにある.20kaに白糸軽石を噴出した火道を噴火末期に上昇してきて栓をした溶岩ドームである.
離山はかつて第三紀の火山と考えられたこともあったが,最近のテフロクロノロジー調査によって,21kaに出現した溶岩ドームであることがわかった.この溶岩の上昇に伴って雲場熱雲が軽井沢一帯に広がった.