地点10 赤川の土取り場 鎌原岩なだれ堆積物の断面と自然堤防,前掛E軽石,草津軽石YPk

鎌原岩なだれ堆積物の断面にパッチワーク構造が認められる.ひとつ一つのパッチは引き伸ばされて流れと反対方向に傾斜する覆瓦構造(imbrication)をしめしている.この地点は,鎌原岩なだれの東縁にあたり,露頭の背後でこの岩なだれがつくった自然堤防をみることができる.東側に広がるキャベツ畑は平原火砕流堆積物がつくった平坦面であり,赤川が削った谷との間にある比高10mの尾根がその自然堤防である.

鎌原岩なだれ堆積物の下には厚さ1mのクロボクがあり,真ん中ふきんにE軽石が挟まれている.クロボクはその下の褐色ロームと同じくレスである.黒色は腐植の色である.ススキなどの草原植生のあるところに堆積したため腐植の集積が起こった.日本では,完新世に堆積したレスは黒いのが普通である.野焼きなどの人間活動がおよそ10kaから活発化したことと関係あるらしい(早川,1995).

草津軽石(YPk) の下には火山シルト・火山砂を挟んで平原火砕流堆積物がある.平原火砕流堆積物の砂礫パイプを伝わって上昇した高温ガスが YPk 軽石礫の下面を汚染している.平原火砕流堆積物がまだ冷えきらないうちに YPk が堆積したことの証拠である.火山シルト・火山砂は別方向に流れ下った火砕流のサーマル雲からの降下物あるいは火砕流堆積物からの二次爆発で生じた降下火山灰である.ただし,斜交層理が認められることからわかるように,風と水流の作用によって部分的に再堆積している.

地点10の露頭全景
1万5000年前の草津軽石の上に,レス(クロボク/ローム)を挟んで,鎌原岩なだれ堆積物がのる.

草津軽石
軽石礫と鉱物結晶からなる.シルト粒子は含まれていない.

火山砂・シルト層
草津軽石と,その下の平原火砕流堆積物に挟まれる.


地点1 馬取
地点2 上発地
地点3 杉瓜
地点4 平原
地点5 峰ノ茶屋
地点6 白糸の滝
地点7 黒豆河原
       地点8 鬼押出し
       地点9 プリンスランド
       地点10 赤川の土取り場
       地点11 鎌原観音堂
引用文献

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